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春の早い時期から咲き始めるオダマキは、まだ花の少ない季節に色を加えてくれる植物です。色も深い紺色や目の覚めるような黄色、八重咲きのピンク色と大変豊富で品種ごとに愛好家がいるほど。そんなオダマキを育ててみたいけれど、どんな植物なのか、置き場所や水やりのタイミングなどわからないとお困りの人も多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では
- オダマキの基本的情報
- 基本的な育て方【置き場所】
- 基本的な育て方【水やり】
- 基本的な育て方【肥料と土選びのポイント】
- 苗選びのポイントと増やし方
オダマキ(苧環)とはどんな植物?
まずはオダマキについて基本的な情報を確認していきましょう。原産地や開花時期、品種について理解を深めておけば、オダマキの好む環境や育て方にも役立ちます。北半球の温帯に分布する宿根草
北米大陸、ユーラシアなど北半球の温帯に多く分布するオダマキは、キンポウゲ科の宿根草です。草全体にプロトアネモニンという有毒成分を含んでおり、触れたり口に入ると、皮膚のかぶれや胃腸炎を引き起こします。多量摂取すると心臓麻痺になる危険もあるため、特にペットの誤飲に注意が必要です。 品種によって多少変わりますが、草丈は30~50㎝にまで育ちますよ。耐寒性が高く日陰でも育つため、初心者でも育てやすいといえるでしょう。日本原産の山野草でもあり、西洋オダマキと合わせて人気の高い植物です。春から初夏にかけて花を咲かせる
オダマキの開花時期は5月~6月で、春から初夏にかけて花を咲かせます。3、4年は元気に毎年花を咲かせますが、だんだん老化して元気がなくなるため苗を育てておくといいでしょう。株が充実すると一株でたくさんの花を咲かせますから、とても見ごたえがあります。咲き終わった花柄をこまめに摘めば、梅雨のはじめまで長く花を楽しめますよ。うつむくような形の花が特徴の園芸に人気の植物
オダマキの魅力はなんといっても、うつむくように咲く花の形です。まっすぐ伸びた茎から小さな花を中心に大きなガクが発達し花のように見える形で、その複雑さと美しさから園芸では人気の高い植物といえるでしょう。青紫色や真っ白の花、さらにはピンクやバイカラーと品種のバリエーションが多く、交配しやすいためオリジナルの花が咲くこともあります。日本在来種には「ミヤマオダマキ」や「ヤマオダマキ」がある
日本にも在来種の「深山苧環(ミヤマオダマキ)」や「山苧環(ヤマオダマキ)」があり、標高の高い山岳地帯の岩場や草原などでよく見かけます。そのため栽培にもくずれにくい用土を用いたり、高山植物として管理したりとコツが必要です。猫の手のように広がった葉は3つに分かれながら、根元にまとまって伸び、株の中心から花茎を伸ばしてひっそりと小さな花を咲かせます。淡い水色のガクと白い花の重なりがうっとりとする美しさです。「セイヨウオダマキ」は八重咲きや斑入りなどバリエーション豊富
「セイヨウオダマキ」の特徴は、八重咲きや斑入りなど在来種にはあまり見られない豪華なバリエーションです。レモンイエローでシャープな印象のアクイレギア・クリサンサ ‘イエロー・クィーン’や、花色が豊富でフリルのような八重咲のアクイレギア・ブルガリス・ステラータ「バロー」シリーズは非常に見ごたえがあるでしょう。オダマキの育て方のポイント①:置き場所
それでは次は、オダマキの基本的な育て方について解説していきます。ポイントはオダマキの好む環境に近づけること。このトピックでは、置き場所についてご紹介します。日当たりと風通しの良い場所で管理
オダマキは明るい日陰で風通しの良い場所で管理しましょう。庭植えでは木陰や午前中に日光が当たり、午後は日陰になるような場所がおすすめです。鉢植えの場合も同様に明るい窓辺やリビングなどがいいでしょう。冬は北風が当たらないような場所へ移動し、防寒対策してください。真夏の直射日光は避ける
日当たりのよい環境を好みますが、真夏の直射日光は要注意。日差しが強くなる7月から9月上旬は、特に3~4割くらい遮光して葉焼けや高温障害を防ぎましょう。葉がちりちりと茶色く縮んでいたら、日当たりが強い証拠です。遮光ネットをかけたり、レース越しに日光を当てたり、直射日光が当たらないようにしてくださいね。オダマキの育て方のポイント②:水やり
次は基本的な育て方のうち、水やりについてご紹介します。鉢植えの場合と地植えの場合でタイミングや水の量が変わってきますので、ぜひ参考にして管理してください。鉢植えの場合は土の表面が乾いてから水やり
まずは鉢植えで栽培する場合です。鉢植えで育てるオダマキは、春から秋まで土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れるくらい水やりしましょう。冬は株が休眠期に入りほとんど地上部は生育しません。冬は水やりの頻度を減らして、1ヶ月に1度か2ヶ月に1度くらいにしてください。地植えの場合は基本不要
地植えのオダマキは基本的に水やりは必要ありません。ずっと雨が降らず葉や茎がしなびているようなときは水やりして乾燥を防いでください。地植えで気をつけるのは、水はけがいいかどうか。もし過湿になりそうな場合は、10~20㎝くらい盛り土をしてから植え付けて、じめじめし過ぎないようにしましょう。オダマキの育て方のポイント③:肥料
育て方の中でも水やりと合わせて覚えておきたいのは、肥料の与え方ではないでしょうか。山野草としてのオダマキは肥料をあまり必要としませんが、セイヨウオダマキや開花時期に合わせて肥料を与えると株が元気に育ちます。ぜひ確認しておきましょう。植え付け時に元肥を施す
まずは、植え付ける時に用土へ元肥を施しておきます。元肥には、リン酸とカリウムが多めの、長期間効果が続く粒状の緩効性肥料がおすすめです。例えば、4号鉢で3つまみ分が目安。オダマキの根はまっすぐごぼうのように伸びる直根性ですから、植え付ける2週間前に用土とよく混ぜ合わせ、根が肥料に直接当たらないようにしておきます。生育期に緩効性肥料を与える
葉や茎がどんどん成長する春から秋にかけては、株の根元へ置き肥を与えましょう。頻度は1ヶ月に1回。追肥として開花時期に、規定量で希釈した液体肥料を10日に1回与えるのも効果的です。花が咲き終わると種を作り株が疲れてしまうため、こまめに花柄を摘んで成長を助けてあげてくださいね。オダマキの育て方のポイント④:土選び
土選びはオダマキにとって育て方の重要なポイントになってきます。日本のミヤマオダマキを育てる場合と、園芸品種として流通している西洋オダマキを育てる場合で配合する用土が違ってきますから、選んだ品種はどちらなのかよく確認してから植え付けてください。水はけの良い土を使う
ミヤマオダマキとセイヨウオダマキの両方で言えるのは、水はけのよい土を使うということです。植え付けの適期は初春の3月頃か、秋の9月~10月。鉢増しする場合も、この時期に行い株へのダメージが早く回復するようにしてください。ミヤマオダマキやヤマオダマキの場合、市販の山野草用の用土を使っても元気に育ちます。市販の草花用培養土でも育てられる
セイヨウオダマキの品種ならば、市販の草花用培養土でも十分育てられます。特に初めて育てる方は、まず市販の草花用培養土で育ててみて、置き場所や風通しを見ながら土を配合する流れが良いかもしれません。赤玉土や鹿沼土などが配合された培養土ならば水はけがよくなり、オダマキにとって良い環境になるでしょう。 観葉植物用の培養土でもよく育ちますが、オダマキにとっては少し栄養が不足しますので、緩効性肥料を足すのを忘れずに。配合する場合は赤玉土7:腐葉土3
もし自分で土を配合するのであれば、水はけの良さや堆肥の量を確認しながら、次の割合で挑戦してみましょう。 セイヨウオダマキの配合目安- 小粒の赤玉土6、腐葉土4
- 赤玉土(小粒)3、鹿沼土(小粒)3、軽石(小粒)3
- 小粒の赤玉土7、腐葉土3
- 硬質鹿沼土(小粒)4、桐生砂(小粒)4、軽石(小粒)2
オダマキの育て方のポイント⑤:冬越し
オダマキの育て方は冬越しにかかっているといっても過言ではありません。4月に芽が伸びてくるまで適切に管理したいですね。ぜひ冬越しについても理解を深めていきましょう。オダマキは冬でも外で育てることが可能
元々オダマキは耐寒性が高いため冬でも外で育てることができます。10月頃には茎葉が枯れ始めて、地上部が姿を消します。根の状態で冬を越すので、寒冷地で土が凍結するなら防寒対策をしてください。腐葉土や敷きわら、ススキなどでマルチングがおすすめ。凍結の心配がないなら、特に対策は不要です。地植え栽培なら断水、鉢植え栽培なら水やりの頻度を減らして凍結を防ぎましょう。寒さによって開花することがある
春と秋に植え付けするのは、オダマキに寒さを感じさせるため。低温を感じることで開花するんです、イチゴやチューリップと同じですね。その影響なのか、まだ寒い2月頃に開花することが稀にあります。秋に開花したオダマキは花数や大きさが春に比べて小さいものの、とてもきれいですよ。冬場もぜひ外で育ててくださいね。オダマキに多い病害虫と対策
さて基本的な育て方や管理について確認してきたところで、オダマキがかかりやすい病気や害虫について解説します。発生する原因を知れば効果的に対策ができますよ。うどんこ病
うどんこ病は5月、6月、さらに秋の9月や10月の時期に発生しやすいカビの病気です。葉の表面が白くなり、光合成が妨げられて枯れてしまいます。症状がでた葉や茎は切り取って処分しましょう。また土にも症状が出ている場合は重曹を溶かした水を散布して、日当たりと風通しをよくして乾燥させるか、ひどい場合は株を掘り起こして鉢に避難させてください。ハダニ
ハダニは、乾燥した環境で20℃以上になると見かける害虫です。早ければ5月から発生します。葉や茎に群がり植物の汁を吸って弱らせてしまいますから、見かけたら殺虫剤を散布して駆除しましょう。数が少ないうちはセロハンテープや古い歯ブラシなどで剥がすこともできます。ヨトウムシ
ヨトウムシは、ガの幼虫で夜に土から出てきて葉っぱやつぼみを全部食べてしまいます。特に新芽の柔らかい部分が食べられやすく、見つけたらすぐに駆除しましょう。主に夜活動するため日中は見つけにくいのですが、土へまくタイプの殺虫剤をまいたり殺虫剤を植物全体に散布して対策します。葉っぱに卵があるなら、葉っぱごと切り取ってください。アブラムシ
アブラムシは、ハダニと同様暖かくなると発生します。集団で葉っぱや茎にくっつき植物の汁を吸って弱らせてしまいます。もし発見したら、殺虫剤を散布して駆除してください。ハダニやアブラムシの対策として、コンパニオンプランツのマリゴールドやネギを混植する方法もあります。天敵のテントウムシやクモがアブラムシを食べてくれるので、薬剤を使いにくい場合はぜひ試してみてください。オダマキの苗の選び方
育て方をいろいろ見てきましたが、いかがですか? オダマキの苗を購入する時に気になるのは、いい苗の選び方です。園芸店やホームセンター、通販サイトで購入する時の見分け方や流通する時期など、いくつかポイントをまとめましたので1つずつ確認しておきましょう。3月頃から流通し始める
オダマキの苗は、3月頃から流通し始めます。3月はまだ地上部がないものや葉や伸び始めた頃ですからコンパクトな苗が多く、持ち運びしやすいのが特徴です。4月を過ぎると葉や茎がどんどん伸びて花芽がついている苗も出回りますから、通販の場合は写真をよく観察し、花の色や形を見てから購入したい方はこの時期がいいでしょう。葉が変色していないものを選ぶ
実際に苗を見て購入したい場合、気をつけるのは葉の色が濃い緑のものを選ぶこと。これは通販での購入も同じです。写真を見るとわかりますが、同じ斑入りの品種でも、日光不足や栄養不足の苗は葉が全体的に黄色く、斑もぼやけてはっきりとしていません。葉の色と合わせてうどんこ病などの病気がないかどうかも確認しておきましょう。茎がしっかりとしたものを選ぶ
最後のポイントは、茎が太く固いものを選ぶことです。元気のない苗は茎が細長くしなしなと柔らかく、植え付けても花が咲かなかったり病気になったりしますので避けましょう。逆に茎がしっかりしたものは、その後の生長も健康に育つ可能性が高く、初めて育てる方はよく茎の状態を確認してから購入するようにしてください。オダマキの植え付けのやり方
いい苗を選んだら、次は植え付けていきましょう。育て方がわかれば後は植えるだけ。植え付けのほかに、株が大きくなってから行う鉢増し、植え付ける適期や植える時のポイントをくわしくご紹介します。鉢植え、地植えどちらでオダマキを楽しみますか?2月頃か9月~10月頃が植え付けの適期
オダマキの植え付けの適期は、まだ寒い2月か、秋の9月~10月にかけて。植え替えと鉢増しも同じ時期がいいでしょう。両方とも頻度は1年に1回が目安。特に2月は根だけの休眠中の状態で植え付けて、オダマキへのダメージを減らすのが理由です。秋の植え付けも同じ理由で、種を作り終えて株が休眠に入る時期にあたります。葉や花芽があっても植え付けられますが、その時は用土や環境によく注意して植え付けるようにしましょう。根を傷つけないようにポットから出す
植え付け、植え替えともに、ポットから用土ごと苗を取り出し、根鉢を崩さないようそのまま植え付けます。オダマキの根はごぼうのような太い根がまっすぐ伸びていく直根状なので、傷めてしまうと株が弱る原因に。ひげのような細い根がはみ出していても地植えならそのまま植えてOKです。鉢へ植える時も、なるべくそのまま植え付けてください。長く伸びすぎた根は切る
もしポットの下から根がたくさん伸びていたり、ポットから取り出したときにびっしりと土が見えない位根鉢が回っていたら、そっと伸びすぎた根だけをハサミで切ってください。鉢におさまる位、周囲を軽く切りそろえるくらいが目安です。この時に黒く傷んだ根があれば合わせて切り落としておきます。水はけの良い土を使う
植え付けと同様に鉢増しも、水はけの良い土を使いましょう。小粒の赤玉土と腐葉土を混ぜ合わせておきます。地植えの場合、一度植え付けてしたらそのままで構いません。鉢植えの場合は、植え替えするたびに新しい土を使います。1年経過した土は、ナイロン袋へ入れ密封殺菌し、市販の再生材を混ぜて不足した養分を補えばまた次の植え替えに使えます。オダマキの増やし方
オダマキは2つの方法で簡単に増やすことができます。1つはタネから増やす方法、もう1つは株分けする方法です。タネは市販のものでも、花後にできたものでもOK。花を楽しんだ後はお気に入りのオダマキを増やしてみましょう。種まき
種まきの適期は4~6月、そして9~10月です。用土は市販のタネまき用培養土がおすすめ。発芽までは2~4週間ほど。発芽するまで霧吹きで乾かさないよう注意しましょう。 採取してすぐまくのを「とりまき」といいます。保存しておいたものに比べて比較的発芽が良く揃うのが特徴です。花後、果実が茶色く熟したら先端が割れて、黒いタネが出てきますよ。保存しておいたタネは一晩水に浸してから種まきましょう。発芽率がよくなります。春にまいた場合は翌年の春、秋にまいた場合は翌々年の春に開花します。苗が十分に生長してから冬の低温に当たって花芽を作るからだと言われています。株分け
もう1つの増やし方である株分けは、中級者向けです。植え替えと同時行うと株へのダメージが低く、回復も早いでしょう。適期は芽が出る前の2月頃。株を掘り起こして、手かハサミで切り分けていきます。自然に分かれているなら、手でほぐすようにすれば簡単にできますよ。 逆に根が絡んでいる、つながっている場合は、殺菌消毒しているハサミを使って切り分けます。切り口に、殺菌剤や癒合剤を塗って菌の繁殖を抑えましょう。分けた後は別々に植え付ければ完了です。オダマキが枯れる原因と対処法は?
さて、基本の育て方や応用の育て方についてかなり理解が深まりましたね。オダマキの育て方でいくつかポイントがありますが、育てているうちに慣れればもう大丈夫。しかし問題ないはずなのに元気がなくなって来たら、困ってしまいます。このトピックでは、オダマキが枯れやすい原因とその対処法についてまとめました。オダマキは寒さには強いが暑さには弱い
オダマキの風通しや水やりに問題はないはずなのに、なんだか元気がないことはありませんか? 実はオダマキは寒さには強いけれど暑さには弱い植物です。真夏の暑さで衰弱してしまったというお悩みをよく伺います。ベランダの照り返しも避けましょう。置き場所を移動して涼しい環境にするか、遮光ネットをかけて枯れないよう対処してください。直射日光による葉焼け
置き場所に関連して、株が弱る原因がもう1つあります。直射日光による葉焼けです。オダマキは明るい日陰を好み、強い日差しが苦手。あまりに日光が当たる場所だと葉が茶色く変色してちりちりと焦げたようになります。自然と光合成ができなくなりますので、葉焼けした葉っぱは切り、直射日光を避けた日陰に鉢を移動してくださいね。病害虫
最後の1つは、病害虫による被害です。アブラムシやハダニは気温が上がり暖かくなると発生しますので、予防に殺虫剤を散布するか見つけたらこまめに駆除してください。また梅雨の時期に心配なのがうどんこ病です。うどんこ病は、風通しが悪く日光不足の状態で発生しやすくなりますから、梅雨前に適度に剪定したり日光が当たるよう工夫したりと対策しておきましょう。【まとめ】オダマキの育て方を紹介!苗選びのポイントや増やし方まで徹底解説
最後まで読んでみていかがでしたでしょうか。オダマキは北半球に広く分布する耐寒性の高い植物で、園芸品種も多く、非常に人気の高い多年草です。自分で栽培してみたい、花を楽しみたいなど数年にわたって長く栽培できますから、園芸初心者さんにもおすすめです。もし途中で栽培方法に悩んでも、こちらの記事を参考に解決することができますよ。 この記事のポイントは- オダマキはうつむくような形の花が特徴の園芸に人気の植物
- セイヨウオダマキは八重咲きや班入りなどバリエーション豊富
- 育て方のポイント① 日当たりと風通しの良い場所で管理
- 育て方のポイント② 水やりは土の表面が乾いてから
- 育て方のポイント③ 肥料は元肥に緩効性肥料、追肥は1ヶ月に1回
- 育て方のポイント④ 水はけの良い土を使う