花の少ない秋冬に開花し、庭を明るく彩ってくれるサザンカやツバキ。どちらも丈夫で育てやすく年中きれいな緑色の葉を茂らせるため、庭木や鉢植えとしても人気の植物です。しかし性質だけでなく、
花や葉の姿もよく似ていて実際には見分けがつかないという人も多いのではないでしょうか。具体的にどのような違いがあるのか気になりますよね。
サザンカとツバキを見分けるには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
そこでこの記事では、
- サザンカとツバキの特徴
- サザンカとツバキの開花時期の違い
- サザンカとツバキの花の形の違い
- サザンカとツバキの花の散り方の違い
- サザンカとツバキの葉の違い
上記について詳しく解説していきます。
この記事を最後まで読んで頂ければ
サザンカとツバキの特徴や、両者には多くの違いがあることが分かります。また育て方や、他にも間違われやすい植物についてもお話ししています。サザンカとツバキの違いが深く分かり、どちらの樹木か見分けることができるようになりますよ。
サザンカとツバキは同じ品種
サザンカとツバキはどちらも鮮やかな花が美しく、日本で古くから親しまれてきました。生垣などに植えられることも多く、さまざまな場所で見かけます。そんなサザンカとツバキですが、一見すると同じ植物に見えるほどよく似ています。両者の区別がつきにくいのは、実は品種が同じであることからきています。
ツバキ科ツバキ属の植物でとても共通点が多い
サザンカとツバキは、どちらも
ツバキ科ツバキ属の常緑小高木です。あまり知られていないかも知れませんが、お茶の木の仲間になります。緑茶やほうじ茶、ウーロン茶など日本で一般的に好まれているお茶はツバキ科ツバキ属の木が由来のものです。またどちらも生薬として取り入れられており、植物由来の薬に幅広く使用されています。サザンカとツバキは見た目だけでなく、基本的な性質もよく似ています。
2種類とも日本原産の植物である
サザンカとツバキの学名はそれぞれ、カメリア・サザンカ(Camellia sasanqua)と、カメリア・ジャポニカ(Camellia japonica)と言います。名前からお分かりの通り、どちらも
日本原産の植物になります。サザンカは台湾や朝鮮半島などにも自生していますが、
ツバキは古くから日本に自生する固有種です。その歴史は長く、日本書紀である「万葉集」にも記述があることが確認されています。
ツバキとサザンカとは?
同じ植物と間違われることの多いサザンカとツバキですが、それぞれどのような特徴を持った植物なのでしょうか。ここからは、両者の基本情報や育て方について説明していきます。
ツバキ
ツバキの基本情報と育て方を以下にまとめました。
基本情報
ツバキは日本と台湾が原産で、冬の寒い時期に開花します。花の色はバリエーション豊富で、さまざまな表情を見せてくれます。ツバキの別名は「
ヤブツバキ」の他に、日本海側の豪雪地帯に分布しているものは「ユキツバキ」と呼ばれることがあります。
科・属名 |
ツバキ科・ツバキ属 |
原産地 |
日本・台湾 |
開花時期 |
1~4月 |
花の色 |
赤、ピンク、白、複色、混色 |
別名 |
ヤブツバキ |
育て方
日本原産のツバキは、四季の変化に対する適応能力が高く育てやすい花木です。
丈夫な性質を持ち、半日陰の環境を好みますが日なたでも日陰でも良く育ちます。花付きを良くしたい場合は、西日を避けた風当たりの少ない場所を選びましょう。樹形を保つために剪定する場合は、3~4月が適しています。また、庭植えのツバキは基本的に水やりの必要はありません。ただし、植え付けてから2年以内の株は鉢植えでも庭植でも、土の表面が乾いたらたっぷりの水を与えましょう。
サザンカ
サザンカの基本情報と育て方を以下にまとめました。
基本情報
サザンカは日本原産で、秋から冬の時期に花を咲かせます。可愛らしいピンク色の花は香りが爽やかで見る人に癒しを与えてくれます。サザンカの別名は「
ヒメツバキ」が良く知られていますが、サザンカとツバキの交雑種である「
寒椿」の名前で呼ばれることも多くあります。
科・属名 |
ツバキ科ツバキ属 |
原産地 |
日本 |
開花時期 |
11月~2月 |
花の色 |
ピンク |
別名 |
ヒメツバキ |
育て方
サザンカも基本的にはツバキ同様育てやすい花木ですが、
やや寒さに弱い性質を持っています。半日陰が理想的ですが、できるだけ明るい場所を選びましょう。冬に気温が-5℃を下回るような場所は防寒対策が必要です。
庭植では北風が当たらない場所に植え、鉢植えのサザンカは屋内に取り込むなどして管理します。剪定時期はツバキと同じく新しい枝が伸び始める前の3~4月です。水やりの頻度はツバキと同じく、鉢植えの株や、植え付け後2年以内の庭植えの株には土の表面が乾いたタイミングでたっぷりの水を与えます。
サザンカとツバキの違い①開花時期の違い
サザンカとツバキの基本情報や育て方が分かったところで、ここからはどのような違いがあるのか詳しく見ていきましょう。見た目や花の時期の違いを知れば、サザンカとツバキを見分けることができるようになりますよ。
サザンカは11〜2月頃に咲く
サザンカは基本的に
11~2月頃に優しい香りの花を咲かせます。最近では品種が増え、幅広い開花時期のサザンカを楽しむことができます。地域によって時期は多少異なりますが、
晩秋から初冬の花として知られてます。
ツバキは1〜4月頃に咲く
ツバキはサザンカより少し遅れて
1~4月頃に花の時期を迎えます。ツバキには品種がたくさんあり、春の時期に開花する遅咲きのものも存在しますが、一般的には
冬の花として知られています。ツバキには匂いがありませんが、ツバキとサザンカの交雑種とされる寒椿は淡く優しい香りがします。
秋咲き始めるのがサザンカ、冬になってから咲き始めるのがツバキ
サザンカとツバキはどちらも寒い時期に花を咲かせますが、開花期は少し違います。サザンカは秋に咲き始めて冬にかけて見頃を迎えます。一方でツバキは冬に咲き始め、春にかけてが花の盛りの時期になります。
1~2月は開花時期が重なるので分かりにくいですが、咲き始めたタイミングで見分けがつきやすくなります。
サザンカとツバキの違い②花の形の違い
サザンカとツバキは間違われることも少なくないですが、よく観察すると花の形に違いがあることに気づきます。是非一度、近所や公園などのサザンカとツバキを見比べてみてください。
ツバキは花がやや筒状で立体的で厚みがある
ツバキの花は少しすぼまった形で咲き、満開でもやや筒状です。
花弁の1枚1枚が固くてしっかりしているため、花自体も立体的で厚みがあるのが特徴です。
サザンカは花がツバキから比べて平面的で薄い
サザンカの花は広がって咲き、満開時には花弁が反り返った状態になります。
花弁はヒラヒラとした柔らかい質感で、花の形状もツバキと比べて平面的で薄い印象です。
サザンカとツバキの違い③花の散り方の違い
サザンカとツバキの見分け方で最も知られているのは、花の散り方の違いです。とても良く似た花姿ですが、花の構造が異なるため散る様子も変わってきます。
ツバキは花びらとしべが一塊になっていて丸ごと落ちる
ツバキのしべは1つに固まっており、花弁ともくっついて一つの塊になっています。そのため花の時期が終わると、
花がぼとっと丸ごと落ちて散ります。ただし、ツバキの園芸品種の中には花弁が散るものも存在します。
サザンカは、花びらもしべもバラバラと落ちる
サザンカはしべと花弁が一塊になっておらず、
バラバラと落ちて散ります。花がそのまま落ちるツバキに対して、サザンカの周りには花弁が散乱しています。花の時期が終わったら、木の下を見ると見分けがつきやすいですね。
サザンカとツバキの違い④葉の違い
サザンカとツバキは、近づいて観察すると葉にも違いがあることが分かります。葉の形は良く似ていますが、サイズや細かい特徴の違いが見分けるポイントになります。
葉の大きさで見分ける方法
1番分かりやすいのは葉の大きさの違いです。
サザンカと比べるとツバキの葉は、一回り大きく厚みもあります。またどちらも葉の表面に光沢がありよく似ていますが、サザンカの葉は裏側の葉脈に沿って毛が生えているのが特徴です。
葉脈で見分ける方法
葉の大きさは個体差もありますが、より確実に見分けるには葉脈を観察することをおすすめします。
葉の中心を走っている太い葉脈が黒く見えるのがサザンカで、透けて見えるのがツバキです。葉を陽にかざすと分かりやすいのでチェックしてみてください。
鋸歯(葉のふちのギザギザ)で見分ける方法
葉のふちのギザギザを「鋸歯」と言いますが、その違いで見分けることもできます。植物によって鋸歯の有無や形状は異なりますが、
よりギザギザが深くなっているのがサザンカです。ツバキはサザンカと比べると浅く、近くで見ないと分からない程度の鋸歯になっています。
サザンカはワビスケやボタンにも似ている
ここまでの解説で、サザンカとツバキの見分け方はお分かりいただけたと思います。しかしよく似ているけれどどちらにも当てはまらない花木を見たことがありませんか。実はサザンカは
ワビスケや
ボタンと間違われることも少なくありません。雰囲気が似ていて紛らわしいのですが、この機会にワビスケとボタンとの見分け方も知っておきましょう。
ボタン(牡丹)との見分け方
サザンカがツバキ科ツバキ属の常緑小高木なのに対して、ボタンはボタン科ボタン属の落葉低木になります。
葉も小さく艶がないのが特徴で見分けやすいポイントになります。また開花時期が全く異なり、
ボタンは基本的に春の4月~6月に花を咲かせます。
ワビスケ(侘助)との見分け方
ワビスケはツバキの一種なので、サザンカににているのも納得できます。ワビスケには定義があって、「太郎冠者」という品種の子孫であることと、花粉を作る葯の機能が退化していることの2点を満たしていることが条件になります。見た目の特徴としては、
花が小さめで一重咲きや猪口咲きが多いことが挙げられます。
【まとめ】サザンカとツバキの違いってなに?2つの特徴から見分け方まで解説
サザンカとツバキの違いについて詳しく解説してきました。
本記事の内容は、
- どちらも日本原産のツバキ科ツバキ属の常緑小高木である
- サザンカは晩秋から初冬の11月~2月頃、ツバキは少し遅く初冬から春の1月~4月頃に開花する
- ツバキの花は筒状で花びらが固いのに対し、サザンカの花は平面的で花びらが柔らかい
- 花の構造の違いからツバキは花が丸ごと落ちて散り、サザンカは花びらがバラバラになって散る
- サザンカは葉脈が黒く見えて鋸歯が深く、ツバキは葉脈が透き通っており葉が一回り大きい
サザンカとツバキはどちらも日本原産で同じ品種なので、見分けがつきにくいのも仕方ありません。
一般的には花の散り方の違いが良く知られていますが、細かく観察すると開花時期の他に花や葉にも異なる点がいくつかあります。是非今回解説した違いを参考にして、サザンカとツバキを区別して鑑賞を楽しんでみてくださいね。
東京寿園では、他にも植物に関するたくさんの記事をご用意しております。植物の育て方やその他気になることがあればぜひ参考にしてください。最後までお読みいただきありがとうございました。