「肥料の三要素」とは?各要素の役割から施肥のポイントを紹介

「肥料の三要素」とは?各要素の役割から施肥のポイントを紹介
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目次

肥料の三要素は農業や家庭菜園での土づくりをするうえで、とても重要なのをご存じでしょうか。三要素がないと植物が丈夫に育つことが難しくなります。 そこで今回は
  • 肥料の三要素とは?
  • 窒素の役割
  • リン酸の役割
  • カリウムの役割
  • 施肥するときののポイント
  • 化学肥料の袋の数字の意味
  • 三要素以外に必要な栄養素
について詳しく解説します。 三要素それぞれのはたらきを知っておくことで、育てたい作物にどの肥料が適しているのか判断しやすくなります。もちろん、三要素以外にも必要な栄養素はあるため、効率よく植物を育てるためにもぜひチェックしてみてくださいね。

肥料の三要素ってなに?

まずは農業や家庭菜園でも必要となる肥料の三要素が、そもそもどのようなものなのかを解説します。園芸初心者の方はもちろん、新しい作物の栽培を始めるときも知っておくと失敗のリスクも減らせるでしょう。

作物や植物の栽培には多くの栄養素が必要

作物や植物の栽培には多くの栄養素が必要です。植物に必要な栄養素は17種類といわれています。栄養素の中でも植物がたくさん必要とするものは「多量要素」と呼ばれ、微量程度必要とされるものは「微量要素」といわれています。多量要素だけでなく、微量要素も不足すると植物の生育が悪くなる可能性があるため、バランスよく行き届くことが大切です。

特に重要なのは窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)の三要素

作物や植物の栽培に必要な栄養素の中でも特に重要なのが、今回ご紹介する「窒素」「リン酸」「カリウム」の三要素です。三要素はそれぞれ窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)とアルファベットで表記されます

三要素は作物を効率的に栽培するために必要な成分

窒素・リン酸・カリウムの三要素は作物を効率的に栽培するために必要な成分です。窒素は葉や茎の生育に欠かせない栄養素で、リン酸は花や実付きをよくするのに効果的。カリウムは植物の健康状態を維持するために必要な栄養素です。

「NPK」の覚え方は「葉果根(ばかね)」

窒素・リン酸・カリウムは「N・P・K」で表記されますが、この順番に覚えましょう。覚え方は「葉果根(ばかね)」です。窒素は「葉や茎」を強くし、リン酸は「果実の付き」を良くします。加えてカリウムは「根」を強くして、植物を丈夫に育てるため「葉果根」で覚えるとわかりやすくなるでしょう。

窒素の役割

植物に必要な栄養素の中でもとくに必要な三要素。まずはその中でも葉や茎を強く育てる窒素の役割について解説します。窒素の役割がわかれば、三要素の中でも最初に表示される理由も納得ですよ。

植物の茎や葉や花などの生長に欠かせない成分

窒素は植物の茎や葉、花などの生長に欠かせない成分です。とくに植物の生育初期に欠かせない成分で、葉を緑色にして茎を丈夫に育てます。そのため植物の三要素である窒素が不足すると、葉色が黄色みがかったり、小ぶりになることも。植物が生長するうえで必要なクロロフィル(葉緑素)も窒素がないと作られないため、生育には欠かせないというわけです。

たんぱく質を作る働きを持つ

三要素の一つである窒素は、たんぱく質を作る働きもあります。植物は根から窒素を吸収するとブドウ糖と組み合わさり、たんぱく質が作られます。その際、同時にアミノ酸も生成。この一連の流れを「窒素同化作用」といい、植物にとって非常に大切な働きです。ちなみに窒素と結合するブドウ糖は光合成により作られています。

植物には硝酸イオンの形で取り入れられる

窒素は植物が生長するために重要な三要素の一つである一方、そのまま吸収されるわけではありません。植物は窒素をアンモニウムイオンや硝酸イオンの形で輸送され吸収し、取り入れます。つまり植物は窒素をそのまま吸収できないため、硝酸イオンとして輸送され土壌内の微生物が分解。その後、無機化してようやく吸収できるというわけです。 その後、植物は硝酸イオンを吸収するとアンモニウムイオンに変化させます。この窒素が変化した先のアンモニウムイオンがアミノ酸や核酸など生体成分を作り出しています。

リン酸の役割

続いては三要素の2番目に表記されるリン酸の役割について解説します。リン酸は三要素の中でも草花や野菜、果実を栽培するときに重要になる成分です。リン酸の役割は以下の3つがあります。

DNA・RNAを作るのに欠かせない成分

リン酸は遺伝子の元になるDNA(核酸)・RNA(リボ核酸)を作るのに欠かせない成分です。DNAは生物の設計図で、RNAはタンパク質を合成する際に必要な遺伝子のこと。加えて、リン酸は糖類と結合して呼吸をする際に必要なエネルギーも作り出します。つまりリン酸は植物が生育するための心臓部のような役割も果たすというわけです。

枝分かれや開花・結実の促進効果がある

リン酸には枝分かれや開花・結実の促進効果があります。三要素の中でリン酸が多いと花がたくさん付き、果実は多く実るでしょう。とはいえ、リン酸そのものが花や実を育てるわけではなく光合成を促した結果、花や実を付けます。リン酸が光合成を促すことで、植物のエネルギーを活性化。そして先ほどお伝えした窒素同化作用をサポートしながら、植物を大きく育てているというわけです。リン酸も窒素と同じく、植物にとって非常に重要な成分ということがわかりますね。

生育期間~花期間の間に与えると効果的

リン酸は花や実を付きやすくする栄養素のため、生育期~花期間のあいだに与えると効果的です。生育期~開花まで植物はたくさんのエネルギーを必要とします。そのためこの期間にリン酸を与えることで、原動力となりより実付きや花付きが良くなるでしょう。花や実付きを良くするリン酸は「花肥え」や「実肥え」などと呼ばれています

カリウムの役割

三要素の3番目に表記されるカリウムの役割も、やはり植物にとって非常に重要なものです。三要素の中でも根に深く関係する栄養素、カリウムの役割について詳しく解説します。カリウムの役割は以下の3つです。

植物の中の水分を維持するのに欠かせない成分

カリウムは「カリ」とも呼ばれ、植物の中の水分を維持するのに欠かせない成分です。というのも、植物も人間と同じように水分バランスが適切でないと、丈夫に育ちません。カリウムは植物の水分バランスを調節して、細胞内外の圧力を適切に保ちます。そして細胞内の浸透圧が高まると、植物が水分を取り込めるようになるという仕組み。つまり、カリウムは植物が水分を取り込むためには必要不可欠な栄養素というわけです。

根の張りを良くし、根を活性化する効果がある

カリウムは水分バランスを調整して、根の浸透圧を高めてくれるため、根張りを良くする効果があります。つまり、根が水分や栄養分を吸収できるように、経路を作る役割を果たすのがカリウムです。そのためカリウムが不足すると、水分や栄養分を吸収できなくなり、やがて枯れてしまいます。カリウムは一度根に吸収され、蓄積すると残りやすい成分のため、作物を栽培する初期の段階でしっかり与えてあげましょう。

細胞液の中でカリウムイオンとして存在する

三要素であるカリウムは植物の細胞液の中でカリウムイオンとして存在します。植物に吸収されてカリウムイオンになると葉から根に栄養を送り、発育を促し、病気にかかりにくい状態にしてくれます。カリウム「根肥え(ねごえ)」とも呼ばれるのは吸収されたあとも長く残り続け、根に栄養を送り続けることからきているのも納得ですね。

施肥するときののポイント

三要素のそれぞれの役割を解説しました。ここからは実際に施肥するときのポイントをご紹介します。三要素がどれも重要な栄養素である一方、作物に合わせた量や質を選ばないと植物にダメージを与える可能性もあるため、しっかりチェックしておきましょう。

①:作物にあった肥料の種類や量を与える

三要素を施肥するときは、作物に合った肥料の種類や量を与えましょう。たとえばナスやキュウリなどは生育期間が長いため、たくさんの肥料を必要とします。一方、レタスやほうれん草などの葉物野菜などは生育期間が短く、少しの肥料でも十分です。他にもトマトなどの果菜類はリン酸が多く必要で、小松菜は葉や茎を丈夫にして水分を維持するカリウムが重要。このように育てる環境や作物によって肥料の種類や与える量を把握して、適切な散布をしましょう。

②:JAや県が出している指標を参考にするとよい

育てたい作物にどのような種類の肥料が必要なのか、どれくらいの量を与えるのかわからない場合は、JAや県が出している指標を参考にしましょう。なんとなくで与えるよりも、指標を参考にしたほうが、失敗なく作物を育てられます。

③:肥料の与えすぎも生育不良の原因になるので注意する

肥料は植物を丈夫に育てるために必要な一方で、与えすぎると生育不良の原因になります。とくに三要素の中の窒素は多すぎると土に残ってしまい、病害虫の原因になることも。また植物が大きくなりすぎて、丈夫どころか弱ってしまう可能性もあります。肥料も与えすぎると逆効果です。適切な量とタイミングを守って、効率よく上手に育てましょう。

化学肥料の袋の数字にはどんな意味がある?

三要素の重要性がわかりましたが、実際に肥料を選ぶときに目につくのが数字ではないでしょうか。ホームセンターや園芸店で販売されている化学肥料のパッケージには数字が表記されていますが、その意味について詳しく解説します。

5-5-5などの数字は三要素の比率を表している

化学肥料の袋に記載されている「5-5-5」などの数字は、三要素の比率を表しています。丁寧に窒素・リン酸・カリと記載されている場合もあれば、数字だけ表示されているときもあります。三要素の比率は肥料選びで重要なため、覚えておきましょう。

5-5-5の場合100g中に窒素、リン酸、カリが5%ずつ入っている

化学肥料の数字が「5-5-5」の場合、100g中に窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)が5%ずつ入っているという意味です。どの化学肥料でも袋の数字の成分は窒素・リン酸・カリの順番で表示されているため、最初にお伝えした「葉果根(ばかね)」の覚え方を思い出して、チェックしてくださいね。

ハイフンが無い場合は商品名の可能性があるので注意する

化学肥料の袋にはハイフンがない「555」などの数字が記載されていることもあります。ハイフンがない場合は、商品名の可能性もあるため注意してください。正確な成分の含有量を知りたい場合は、裏面の「保証票」も確認しておくと間違いないでしょう

三要素以外に必要な栄養素

三要素の重要性をお伝えしましたが、もちろん植物はこれだけで生長できるわけではありません。窒素やリン酸、カリウムの三要素以外にも、植物には必要な栄養素がたくさんあります。最後は三要素以外に必要な栄養素について詳しく解説します。

三大要素以外の多量要素や微量要素がある

三大要素以外には「多量要素」や「微量要素」というものがあります。多量要素にはカルシウムやマグネシウムなどがあり、植物に多く吸収される栄養素です。一方、微量要素には鉄やマンガンなどがあり、作物の体内に約0.01%以下存在するものを指します。いずれも三要素ほど必要としませんが、植物が健康に育つためには大切な栄養素です。

三大要素以外の多量要素

まずは三大要素以外の多量要素からご紹介します。多量要素はカルシウムを含めた3種類の元素成分です。

カルシウム

カルシウム(Ca)は植物の細胞壁や細胞膜を作る役割をし、根を健康に生育するために必要な成分です。そのためカルシウムが不足すると新芽が出にくくなったり、果実が腐る可能性も。カルシウムは土の中に混ぜ込まれるとアルカリ性になるため、酸性の土を中和する苦土石灰に多く含まれています。

硫黄

硫黄(S)は植物の生理作用に重要な成分で、酸化や還元、生長を調節する役割を果たします。そのため硫黄が不足すると生育できず、葉が黄色くなり枯れてしまうことも。窒素が不足したときのような症状が出るため、硫黄も植物には必要な成分といえます。

マグネシウム

マグネシウム(Mg)は光合成に必要な葉緑素の成分。土の中にも存在する成分のため、欠乏する可能性は低い一方、不足すると葉の色が薄くなったり、白くなるなどの症状が発生する可能性があります。

微量要素

微量ながらも必要な栄養素である微量要素についてもチェックしておきましょう。微量要素にはマンガンや鉄をはじめとした8種類の元素成分があります。

ホウ素

ホウ素(B)は非金属元素で植物の細胞壁を構成します。根や新芽の生長を促すだけでなく、受粉や細胞分裂を助ける役割もあります。大根や白菜などのアブラナ科の野菜を育てる場合は、ホウ素の欠乏に注意が必要です。白菜などのアブラナ科の野菜は必要とするホウ素量が多いため、元肥にも含まれているか確認しておきましょう。

塩素

塩素(Cl)は炭水化物の合成や光合成に関係する成分です。塩素が含まれていると病害虫の抵抗性が高まるとされています。塩素が欠乏すると新芽が黄色くなったり、刃先から枯れる可能性もあるため微量ながらも必要な栄養成分です。一方で過剰症の場合は、三要素であるリン酸の吸収を妨げる可能性もあります。

マンガン

マンガン(Mn)は炭水化物や窒素などの代謝に関係する微量要素です。植物が光合成をするときに二酸化炭素を固定する役割も果たします。他にもビタミン類を生成するときや葉緑素をサポートする重要な成分です。マンガンが欠乏すると葉脈が黄色くなり、果実は色が付かなくなります。

鉄(Fe)は植物の代謝や呼吸に関係する酵素の成分で、葉緑素の生成もサポートする微量要素です。欠乏すると葉が黄色くなったり、白く変色することもあります。さらには根も黄色く変色する場合もあるため、必要な量はわずかでも重要な成分です。

亜鉛

亜鉛(Zn)は植物のたんぱく質やでんぷん、酸化還元酵素などの合成に関係する微量要素です。亜鉛は土壌内に存在するため欠乏することは少ない成分。とはいえ、作物や地域によっては欠乏する可能性もあるため、注意が必要です。亜鉛欠乏が発生しやすい条件には、北海道でのタマネギやトウモロコシ栽培があげられています。

銅(Cu)は植物の酸化還元酵素を構成する微量要素です。植物の呼吸をサポートし、傷ついた組織はポリフェノールを生成して守る役割もします。皮をむいたリンゴが茶色くなるのも銅がポリフェノールを生成して守っている現象の一つ。その他銅は炭水化物やたんぱく質の代謝にも関わっており、植物の健康を守っています。ただし、過剰症になると根の生育が悪くなるため注意が必要です。

モリブデン

モリブデン(Mo)はレアメタルとも呼ばれる希少金属でもある微量要素です。各産業素材では添加物としても使用されています。植物のたんぱく質やビタミンCの合成を助けたり、土壌の窒素を固定して吸収しやすくするのがモリブデンの役割です。欠乏すると葉が湾曲するため、植物は不格好な見た目になります。

ニッケル

ニッケル(Ni)は植物の尿素の代謝に関係する微量要素です。正確には植物の尿素をアンモニアに分解するウレアーゼと呼ばれる酵素を構成する一つ。必要量はモリブデンよりもさらにわずかな10分の1程度とされています。

【まとめ】「肥料の三要素」ってどんなもの?各要素の役割から施肥のポイントを紹介

今回は肥料の三要素について詳しく解説しました。 今回のポイントは
  • 肥料の三要素は「窒素」「リン酸」「カリウム」の3つ
  • 窒素は葉や茎、花などの生長に欠かせない成分で、たんぱく質を作る働きを持つ
  • リン酸はDNAを作るのに欠かせない成分で、花付きや実付きをよくする
  • カリウムは水分を維持するのに欠かせない成分で、根張りをよくし活性化させる
  • 施肥するときは作物に合った種類や量を与え、JAや県が出している指標を参考にする
  • 化学肥料の袋の数字は窒素・リン酸・カリの順に100g中に含まれる割合を%で表している
  • 三要素以外に必要な栄養素にはカルシウムや硫黄などの多量要素とわずかながらも必要な微量要素がある
でした。 三要素だけでなく微量要素についても解説しましたが、野菜や果物など作物によって必要な量が異なるため、生産者の方は試行錯誤しながら栽培しているかと思います。土壌の状態も環境によって変化するため、肥料をうまく使いこなすには日々の観察も欠かせません。生産者の方だけでなく、趣味で家庭菜園を始める場合も今回の三要素を参考にして、美味しい野菜や美しいお花づくりを楽しんでくださいね。 東京寿園ではたくさんの植物の記事を掲載しております。植物にお困りの際はぜひご活用ください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。