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艶やかな花弁を大きく広げて初夏を彩ってくれるシャクヤクは、お庭で栽培するのにも適した植物です。初夏に開花時期を迎えるシャクヤクは、様々な花色があり切り花や豪華な花束としての人気も高まっています。そんなシャクヤクですが、花木として剪定の作業をする必要はあるのでしょうか。剪定が必要な植物であれば適切な時期に作業をすることによって、さらに元気に健康に育ってくれるはずです。
そこでこの記事では、
- シャクヤクのお手入れで必要な剪定とは?
- シャクヤクの剪定方法と目的①芽かき
- シャクヤクの剪定方法と目的②花がら摘み
- シャクヤクの剪定方法と目的③摘蕾
- シャクヤクの剪定方法と目的④刈り取り
- シャクヤクの剪定に適した時期
- シャクヤクによく似た植物、ボタンとの違い
以上のポイントを中心に解説していきます。
シャクヤクを毎年綺麗に咲かせるためには、4種類の剪定方法を行う必要があります。お家で育てているシャクヤクの状態を見ながら、適切な時期に剪定作業を行うためにこの記事を参考にしてみてください。シャクヤクとよく間違えられるボタンとの見分け方法についてもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
シャクヤク(芍薬)のお手入れで重要な剪定とは?
シャクヤクを元気よく咲かせるために必要なお手入れである「剪定」とはどんな作業を指すのでしょうか。シャクヤクは草花に分類されるため、一般的な剪定とは少し異なった作業が必要になってくるのです。まずは、剪定がどのようなものなのかについて解説していきましょう。
剪定とは、庭木の不要な枝を切り取り生育を良くすること
剪定は庭木の不要な枝を切り取ることによって、風通しを良くして成長を促して生育を良くする作業です。シャクヤクも生育期の春から秋にかけては、ぐんと成長して草丈を伸ばしていきますので適切な剪定を行うようにするのが綺麗な花を咲かせるポイントと言えるでしょう。剪定を行った後は、切り口を乾燥させる必要があるので基本的には晴れた日の午前中に行うのがポイントです。鉢植えでシャクヤクを育成している場合には、剪定の際には直射日光が当たらない明るい日陰で管理するようにしましょう。
シャクヤクはその大輪の花を咲かせるために正しく剪定することが必要
シャクヤクは大きく開いた大輪の花が一番の魅力ですので、養分をしっかりとつぼみに与えて良い花を開花させるためには土壌や肥料などの環境を整えるだけでなく、正しく剪定することが必要になってくるのです。なお、剪定を行う際に用いる園芸ハサミや剪定ばさみは病気の感染を防ぐためにも清潔なものを用いることにしましょう。他の植物に使った場合は、除菌や消毒をして病気の感染を予防します。
シャクヤクの剪定時期や正しいやり方を紹介
シャクヤクにとって剪定が必要な作業だとわかったところで、ここからは剪定を行う最適な時期や正しいやり方についてご紹介していきましょう。シャクヤクには季節ごと、目的ごとに大きく4種類の剪定方法が挙げられます。それぞれが、シャクヤクの元気な成長に欠かせない作業ですので、ひとつずつ見ていきましょう。
シャクヤク(芍薬)の4種類の剪定方法と目的①:芽かき
シャクヤクの4種類の剪定方法の一番目として、「芽かき」という作業について解説していきます。芽かきの作業は、シャクヤクの葉や茎が大きく伸びる春の時期、3月~4月の開花前に行うのがポイントです。
芽かきとは育てる必要のない新芽を取り除くこと
芽かきとは育てる必要のない新芽を取り除く作業です。この作業は花が少しずつ咲き始めるころ、つぼみがほころんできたタイミングで行うようにしましょう。すべての新芽を育ててしまうと、つぼみまで十分に栄養がいかずに開花しない可能性もあります。芽かきは樹形を整えるとともに、効率的に栄養分を与えることも期待できる作業なのです。
方法:細い茎や芽のない茎、密集している茎等をカットする
芽かきの方法は、大きな葉の付け根から伸びる細い茎や芽のない茎をカットすることです。また、密集している場所はより細い茎を選んでカットすることで太陽の光がまんべんなく当たるようになるので綺麗な樹形を形作ってくれるはずです。葉の付け根から伸びる「わき芽」は成長してもつぼみをつけることが少なく、余計な養分を摂られてしまうので積極的にカットするようにしましょう。
目的:風通しがよくなり病気や害虫を予防できる
芽かきの作業の目的は、余分な芽をカットすることによって風通しを良くして病気や毛虫、アブラムシなどの害虫の発生を防ぐことにあります。また、たくさんの芽が成長してしまうと栄養分が分散されてしまい花に養分がいかなくなってしまう危険性もあるのです。適度な芽かきによって、風通しの良い日光がまんべんなく当たるような綺麗な草姿を作ってあげてくださいね。
シャクヤク(芍薬)の4種類の剪定方法と目的②:花がら摘み
シャクヤクの剪定方法の二番目として、「花がら摘み」について解説していきましょう。シャクヤクの花が咲き終わった後に、この作業を行うことによって病害虫の予防にもなるメリットもあるのです。特に花後からは湿度が高い梅雨に入りますので、枯れた花が残っていると水分によって病気になりやすい危険性もあります。
花がら摘みとは花後に花を取り除くこと
「花がら摘み」は、シャクヤクの花が咲いた後に花を取り除くことを指します。シャクヤクは春~初夏にかけて花を咲かせますので、この時期に行う作業を花がら摘みというのです。花がら摘みをすることで、種を付けることがなくなるので株の全体に栄養分が分散されシャクヤクの株もさらに元気に成長してくれますよ。
方法:枯れた花を種を作る部分から優しく摘み取る
花がら摘みは、初心者にも難しくない剪定方法です。その方法は枯れた花を種を作る部分から優しく摘み取るだけで問題ありません。手で折るようにして摘み取ることができますが、しっかりと取れない場合には清潔なハサミを使うのがおすすめです。種を作る部分は、花びらがついている根元にあたりますのでわかりやすいのではないでしょうか。シャクヤクの花びらはひらひらと一枚ずつ落ちることもありますので、すべての花びらが落ちてから残った部分をカットする方法もあります。
目的:見た目を良くすると同時に病気や虫の発生を防ぐ
花がら摘みの目的は、枯れた花びらをつけたままにしないことで見た目を良くすることが挙げられます。また、枯れた花びらがついたままだと水分で湿度が上がったり腐ったりすることによって病気や毛虫などの虫が発生しやすくなってしまうのです。花がら摘みをすることによって風通しも良くなり清潔な状態が保てますので、花びらのふちが傷んできたらカットしてしまいましょう。花が終わったごとに花がら摘みをすることで、他の花や葉にも栄養分が渡りますので結果的に花を長く楽しめるメリットもあります。
シャクヤク(芍薬)の4種類の剪定方法と目的③:摘蕾
シャクヤクの4種類の剪定方法の三番目として、「摘蕾(てきらい)」という作業について解説します。摘蕾はあまりなじみのない作業ですが、綺麗な大輪の花を咲かせたい切り花農家さんなどではよく取り入れられている重要なものなのです。
摘蕾とはつぼみを摘み取ること
摘蕾はその字の通り、蕾(つぼみ)を摘み取る作業です。せっかくついたつぼみを摘み取ってしまうのは少し残念な気もしますが、この作業を行うことによってひとつのつぼみに栄養分が集まるのでより、大輪の綺麗な花が期待できるのです。
方法:形のよさそうなつぼみ1つを残し、それ以外をカットする
つぼみに栄養分を集めるために、形のよさそうなつぼみを1つ残しそれ以外をカットするのが摘蕾の方法です。鉢植えなどは3個~5個くらいのつぼみを残しても問題ありません。地植えの場合にも、良いつぼみ1つに絞れない時には2~3個残して摘蕾を行いましょう。
目的:必要なつぼみに栄養を集中させて咲かせる
摘蕾の目的は、必要なつぼみに栄養を集中させて咲かせることにあります。たくさんのつぼみをつけたままにしてしまうと、どうしても養分が分散されて花が小さくなったり形が悪くなったりしてしまいます。また、シャクヤクの花は基本的に大きいのでたくさんのつぼみがついたままだと重くなりすぎ、株の負担になる可能性もあるのです。
シャクヤク(芍薬)の4種類の剪定方法と目的④:刈り取り
シャクヤクの剪定方法の最後として、「刈り取り」の作業について解説します。刈り取りは、秋の時期に葉が枯れ始めたら行うようにしましょう。
刈り取りとは花後の冬前に株本と地面の境目から茎を刈り取ること
刈り取りとは、花後の冬前に株の根元と地面の境目から茎を刈り取ることを指します。この作業を行うことによって、枯れた葉がなくなりすっきりと見栄えが良くなるとともに病害虫の発生をも防いでくれるのです。刈り取りを行う際に使うハサミは、消毒した清潔なものを用いるようにしましょう。
方法:シャクヤクは宿根草で冬の時期は枯れる
花木に見えるシャクヤクですが、実は宿根草に分類されます。そのため、冬の時期には地上部が枯れて何もなくなってしまうのです。刈り取りの作業を行う方法は、10月~11月の秋の時期に葉が枯れた段階でハサミなどで地上部をカットするだけなので初心者でも簡単に行えます。
目的:風通しがよくなり病気になりにくくなる
刈り取りの目的は、枯れた葉をすっぱりとカットすることによって風通しがよくなって多湿の状態を防ぐことです。多湿や過湿は病害虫の原因にもなりますので、葉が枯れたタイミングで忘れずに刈り取りを行うようにしましょう。また、地上部をカットすることによって、養分を根に蓄えることができますので翌年も元気に新芽を出してくれることが期待できます。
シャクヤク(芍薬)はいつ剪定を行えばよい?
シャクヤクの4種類の剪定方法がわかったところで、いつそれぞれの剪定を行えばよいのか作業スケジュールについて解説していきましょう。4種類の剪定は異なる時期に行いますので、生育期に入ったら忘れずに行うように気を付けるのがポイントです。
芽かきの時期:3月ごろ
芽かきの作業を行う時期は、春になって新芽や茎、葉が伸び始めた3月ごろです。この時期は気温が高くなると、シャクヤクもどんどん成長していきますので様子を見ながら綺麗な草姿になるようにイメージして不要な芽や茎をカットしていきましょう。3月はまだまだ寒い日もありますので、なるべく気温の変動がなさそうな日を選んで作業できると良いですね。
摘蕾の時期:4月ごろ
摘蕾の時期は桜が散り始める4月ごろです。この時期には芽かきしたことによって、ある程度の風通しが良い樹形が保たれているはずです。つぼみの部分もふくらんでわかりやすくなっているはずですので、なるべく形の良いものを残してカットするようにしましょう。一度、作業をした後にもつぼみが形成されることがありますので定期的にチェックするのがポイントです。
花がら摘みの時期:5月から6月
花がら摘みの適期は5月~6月です。4月の後半~5月にシャクヤクは開花時期を迎えますので、花が終わったら適宜、花がら摘みを行うようにしましょう。複数のつぼみを残している場合には次々に花を咲かせていきますので忘れないように気を付けながら、花がらを摘んで清潔な状態を保ってあげましょう。シャクヤクは直射日光に弱いので明るい日陰で育成するとともに、夏に入るまでに剪定の作業を終わらせるのが理想です。
刈り取りの時期:10月から11月
刈り取りの時期は10月~11月の冬に入る前です。この時期にはシャクヤクの地上部の葉は枯れて茶色く変色しているので、病気やカビが発生するまえに根元から刈り取ってしまいましょう。地上部になにもなくなって心配になってしまうかもしれませんが、シャクヤクは宿根草なので栄養分を地下茎にたっぷりとため込んでいるはずです。株分けの作業を行い、シャクヤクを増やしたい方は刈り取りの前に作業を行うようにしましょう。株分けはある程度まで大きく育ったシャクヤクの苗でしたら行うことができます。
やることが多く面倒だと感じる場合には業者に依頼するのもおすすめ
シャクヤクの剪定はタイミングごとに違った作業をする必要がありますので、少し面倒だと感じてしまうかもしれません。また、お庭が広くいくつものシャクヤクを栽培している場合にも手間がかかってしまいますね。そんな時には専門業者に依頼するのもおすすめです。良心的な植木屋さんであれば植物にとって適切な作業を効率的に行ってくれますので、心配な方はお任せするのも良いと思います。
シャクヤク(芍薬)によく似たボタン(牡丹)!両者の違いとは?
最後に、シャクヤク(芍薬)によく似た花姿をもつボタン(牡丹)との違いについてご紹介します。ボタンとシャクヤクは見分けが難しいほど似ている植物ですので、ぜひその違いを知っておいてくださいね。
両者とも大輪の花を咲かせ見分け方が難しいが、シャクヤクは草本でボタンは木本
シャクヤクもボタンも大輪の花びらが多い美しい花をつける植物ですので、見分け方が難しい植物と言えるでしょう。しかしもともとの分類で見てみると、シャクヤクは草本でボタンは木本なのです。シャクヤクが草花に分類されるのに対して、ボタンは樹木に分類される違いがあります。そのため、冬になるとシャクヤクは地上部が枯れて何もなくなってしまいますが、樹木であるボタンは枝を残したまま冬越しする特徴がみられるのです。
見分け方は、葉や香り、散り方の違いなど
シャクヤクとボタンの見分け方は葉の形や香り、散り方などでわかります。葉の形から見てみると、シャクヤクの葉は光沢があり長円形の形をしています。一方で、ボタンの葉はツヤがなく切込みがありギザギザした形をしているのです。また、シャクヤクの花はバラのような芳香がありますがボタンは強い匂いを持ちません。散り方を見てみると、シャクヤクの花は房ごと落ちることが多いのですが、ボタンは花びらが一枚ずつひらひらと落ちる特徴があります。
ボタンの剪定は、樹形を整える工程もあるシャクヤクより難易度が高い
樹木に分類されるボタンは、シャクヤクよりも剪定の難易度が高い特徴があります。ボタンは成長するとそれなりに樹高が高くなりますので、剪定によって樹形を整える必要があるのです。この項目ではボタンの剪定について簡単に解説していきましょう。いずれの剪定も太い枝をカットした際には、切り口に癒合剤を塗布して病害虫の感染を防ぐことが重要です。また、切り口が十分に乾燥するように晴れた日の午前中に作業を行うようにしましょう。
切り戻し剪定
切り戻し剪定は、ボタンの樹高やサイズを大きく変える剪定を意味します。次の年の花芽形成に影響を与えないように、花が終わった後の秋の時期に行うようにしましょう。切り戻し剪定は枝の根元の少し上の花芽を2~3芽ほど残してカットすると良いでしょう。全体をチェックして、伸びすぎた枝や不要な枝を選んで全体の高さが低くなるように剪定を行います。切り戻し剪定を行うことで、次の年の成長を促進させて若々しい枝を出させる良い影響が期待できますよ。
枝透かし剪定
枝透かし剪定も、切り戻し剪定と同じように秋の時期に行いましょう。この時期になると葉が黄色や茶色に枯れていきますので、葉を落とす作業と同時に行うのが良いですね。樹形を大きく変える切り戻し剪定と異なり、枝透かし剪定は風通しを悪くするような密集した枝を選んで数本、カットします。風通しを良くすることで、病害虫の防止にもなりますので数年育てたボタンは積極的に剪定しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回ご紹介した4種類の剪定方法を適切に行えば、たくさんの花を美しく開花してくれるシャクヤクの魅力が存分に味わえるはずです。余分な葉やつぼみ、芽をカットすることによって植物自体の健康にも良い影響を与えてくれますので、ぜひ剪定の作業を行ってあげてくださいね。
今回のポイントは以下の通りです。
- シャクヤクのお手入れで必要な剪定は4種類あり、風通しを改善させて病害虫の原因を防ぐことができる
- シャクヤクの剪定方法と目的①芽かきは春に綺麗な樹形を保つために行う
- シャクヤクの剪定方法と目的②花がら摘みは夏に多湿を防ぎ風通しを良くするために行う
- シャクヤクの剪定方法と目的③摘蕾は初夏に良いつぼみを残し、大輪の花を咲かせるために行う
- シャクヤクの剪定方法と目的④刈り取りは秋の時期に風通しをよくするために行う
- シャクヤクとボタンの違いは葉の形や芳香、散り方で見分けることができる
シャクヤクは剪定の作業とともに、最適な時期に十分な肥料を与えるのが重要な植物です。肥料を適切に与えて土壌の環境を良くするとともに、剪定で形を整えるという手間をかけてあげることによって、シャクヤクはより大輪の綺麗な花を咲かせてくれるのではないでしょうか。鉢植えや庭植えにしたシャクヤクの花をぜひ、何年も楽しんでみてくださいね。
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