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仏事などでよく見かける植物、シキミ(樒)をご存知ですか?常緑性の植物で1年中青々とした美しい葉を茂らしており、現代でも関西地方の葬儀などで多く使われています。その地域にお住まいの方は見かけることも多いのではないでしょうか。本記事では神事や仏事と深い関りのあるシキミ(樒)の花言葉やその由来について詳しくご紹介します。 今回は
シキミにはとても多くの種類の別名があるのですね。墓地に植えられていたり、線香や抹香として利用されていることから、どれも仏事などに関係していることが伺える名前が多いですね。ハナノキはカエデ科にも同名の植物がありますが、全く別の種類の植物です。墓前に仏花の代わりとしてシキミを供える習慣から「花の木」とも呼ばれるようになりました。
「猛毒」というのはシキミの持つ毒のことなのかな?と何となくイメージがつきますが、「援助」や「甘い誘惑」とは一体どのようなことなのでしょうか。理由や由来を含めて解説します。
- そもそも花言葉とは?
- シキミの花言葉とその由来
- シキミの花言葉にあった贈り物のシーンは?
- 実際にシキミを贈った方の体験談
そもそも、花言葉とは?
そもそも花言葉とは一体何なのでしょうか。いつから使われるようになり、どれくらいの時代に日本に普及したのか、あなたはご存知でしょうか?現在でも花言葉はあるシーンでよく利用されていますが、どんなタイミングで利用されているのか、詳しく見ていきましょう。花言葉とは植物のイメージから付けられる言葉
花言葉とはその植物の生育過程や、花のイメージから付けられた言葉です。元々は17世紀ごろのトルコで「言葉や文字に頼らずに気持ちを伝えたい」という想いから始まった習慣のこと。贈る花に自分の気持ちを託したのですね。日本には明治初期頃から伝わり、今でもフラワーギフトを贈るたくさんの方に利用されていますよ。花言葉は贈り物の参考にされることが多い
花言葉は贈り物の参考にされることが多くありますよ。たとえば誰か大切な人に花を贈ろうと思ったとき。どんな花を贈ろうか迷ったとき。そんなときに花言葉を参考にすると、花を選びやすくなるというメリットがあります。言葉に出して伝えるには照れくさいときや、本当の気持ちを伝えるには少し勇気が必要なときでも、花言葉を添えたフラワーギフトならスマートに気持ちを伝えることができますね。シキミ(樒)ってどんな植物なの?
それではシキミ(樒)とはどんな植物なのか、原産地や花の色・別名などを詳しくご紹介します。シキミ(樒)は西日本の神事や仏事によく利用される植物です。もしかしたら関東にお住まいの方はあまり知らないなんて方もいらっしゃるかもしれませんね。しかしシキミは(樒)は古代から日本人の生活に寄り添ってきた植物で、万葉集にも登場していますよ。あまりなじみのない方でもこの機会に幅広い知識を増やしてみるのはいかがでしょうか。東アジアが原産地であるシキミ科の植物
シキミは東アジアが原産地のシキミ科の植物です。日本国内では本州から沖縄諸島に分布し、寺院や墓地などに植えられていることもあります。やはり神事や仏事と関りの深い植物なのですね。1年中緑色の葉が茂る「常緑性」の植物で、高さは2~5mほど、大きいものだと10mほどの高木になるものも。寺院や墓地にある高木はもしかしたらシキミかもしれませんね。葉はツヤのある濃い緑色で先が尖った形をしており、傷つけると抹香や線香の香りを感じます。それもそのはず、葬儀や法事でお焼香をする際に利用する抹香は、シキミを乾燥させて粉末状にしたものを利用していますよ。3〜4月の時期に白や黄色の花を咲かす
シキミは3月~4月に3㎝程度の白や黄色の花を咲かせます。春と言えば桜ですが、ソメイヨシノの開花よりも早い時期に花を咲かせ始めますよ。花はパサパサとした触感で、手をパッと広げたように放射状に開きます。1つの花に対し花弁が10~20枚ほどと多くついているのも大きな特徴。そのうちのいくつかはガクで、花弁とガクの見分けが難しいこともシキミの特徴と言えます。もともとは日本に仏教を広めた中国の僧侶「鑑真」がシキミを日本へ持ち込みました。現在でも真言宗・日蓮正宗・浄土真宗などでシキミを供える習慣が残っており、仏教を象徴する植物として知られていますよ。シキミのもつ強い香りと毒は「邪気を払う」などとされ、お清めなどにも利用されています。植物として唯一、劇薬に指定されているほどの猛毒
そんなシキミは驚くことに植物として唯一、劇薬に指定されているほどの猛毒を持っています。花から根に至るまで「アニサチン」という猛毒を含んでおり、特に実は口にするだけでも死亡する恐れが。そのため「毒物及び劇物取締法」によって劇物の指定を受けている唯一の植物なのですね。シキミの実は中華料理などで利用される「八角」ととても似ており、誤食には注意が必要ですよ。栽培する場合も十分に取り扱いには注意してくださいね。名前の由来には諸説ある
シキミという名前の由来にはいくつかの説があるとされています。シキミの性質やその有毒性が由来となっているように感じますよ。詳しく見ていきましょう。四季美
1つ目のシキミの名前の由来は「四季美」というもの。シキミは常緑性で1年中あおあおとした葉を茂らせています。またシキミは非常に長持ちする植物で、長い期間枯れずに力強く生い茂る姿から「四季を通して美しい」とされ、この名前になったのかもしれませんね。他にも果実が平らな形をしていることから「敷き実」と呼ばれ、転じてシキミとなったという説もあります。悪しき実
2つ目のシキミの名前の由来は「悪しき実」というもの。これはシキミの果実に強い毒が含まれていることが由来と考えられます。「悪しき実」の「あ」が抜け落ちてシキミと呼ばれるようになったという説も。シキミの果実には命を落とすほどの毒が含まれていますから「食べてはいけない実、体に悪い実」となったのではないでしょうか。「ハナノキ」「ハナシバ」などの多くの別名がある
シキミの別名は以下の通り8つほどあります。- ハナノキ
- ハナシバ
- シキビ
- ハカバナ
- コウノハナ
- マッコウ
- マッコウギ
- マッコウノキ
シキミにはどんな種類の花言葉があるの?
シキミの原産地や歴史的エピソード、花の色などをご紹介してきました。つづいて式の花言葉について解説していきます。仏事や神事に関わりの深い植物ですが、どのような花言葉なのか気になりますね。詳しく見ていきましょう。シキミには危険なイメージの花言葉がある
シキミには主に3つの花言葉があるとされています。- 援助
- 甘い誘惑
- 猛毒
【援助】
シキミの1つ目の花言葉は「援助」です。これはシキミが抹香や線香の原料として利用されることに由来していると考えられます。つまり抹香や線香の香りで、故人が極楽浄土へ向かうのを援助・見届けているということですね。仏事になじみ深いシキミならではの花言葉だと言えるでしょう。【甘い誘惑】
シキミの2つ目の花言葉は「甘い誘惑」です。これは毒性が高いにも関わらず、よい香りがする花を咲かせることに由来していると考えられますよ。植物からは人々をリラックスさせる効果がある「フィトンチッド」という香りが発散されています。シキミの枝や葉はヒノキやクスノキよりもフィトンチッドの発散量が多く、リラックス効果が高いとされているのですね。毒性があるため取り扱いには注意が必要ですが、庭に植えて落ち着いた香りを楽しんでみるのも素敵ですよ。【猛毒】
シキミの3つ目の花言葉は「猛毒」です。これは申し上げるまでもなく、シキミ全体に含まれた毒「アニサチン」が由来となっています。特に毒が多く含まれている果実を口にすると、下痢・おう吐・けいれん・めまい・呼吸困難などが起こり、最悪の場合死に至ることも。いい香りに誘われて小さいお子さんやペットが間違って口にしないよう、十分に注意したいですね。色別の花言葉はない
花言葉には同じ花でも花の色別に異なる花言葉をもつ植物もあります。たとえば白いバラは「無邪気・純潔」であるのに対し、赤いバラは「愛情・情熱」であり、紫色のバラは「上品・高貴」とされています。しかしシキミに色別の花言葉はありませんよ。花は白やクリーム色がかった黄色がありますが、どちらも共通した花言葉をもっています。シキミの花言葉の由来を知ろう
ここからはシキミの花言葉の由来を知っていきましょう。花言葉はその植物の歴史的な背景や育ち方に由来して付けられることが多いもの。由来を詳しく知るとその植物の理解度がより深まりますよ。【猛毒】毒性の強さに由来
「猛毒」という花言葉は、シキミの毒性の強さに由来しています。シキミの葉や茎にはイリチン、果実はアニサチンという毒が含まれています。果実に含まれるアニサチンの方が非常に毒性が強く、痙攣性の中毒を引き起こすことも。触るだけで毒が浸透することはありませんが、誤って口にしたりなめたりするだけでも危険です。このように強い毒性があることから「猛毒」という花言葉がついたと考えられます。【甘い誘惑】良い香りがする花に由来
「甘い誘惑」という花言葉は、シキミの香りの良さに反して毒性が強いことに由来しています。シキミの葉や茎からは、何とも言えない甘く清らかな香りが発せられています。先ほども申し上げた通り、フィトンチッドも発生しているため深いリラックス効果も感じられるよい香りです。強い毒性があるにもかかわらずつい香りに引き付けられてしまうといった所から「甘い誘惑」という花言葉が生まれたのではないかと考えられます。【援助】仏事で使われることに由来
「援助」という花言葉は、シキミが抹香や線香に利用されていることに由来しています。故人が極楽浄土へ無事にたどり着けるように、援助するという遺族の思いが込められているのではないでしょうか。またシキミの香りには魔除けの効果があるとされており、故人に悪霊を寄せ付けないと信じられていました。「故人の旅立ちを援助する」という意味合いもあるのかもしれませんね。3月22日の誕生花
シキミは3月22日の誕生花でもあります。誕生花とは365日それぞれの日に特定の花を割り当てたもの。こちらも花言葉と同じで、何の花を贈ろうか迷ったときなどに参考にされることも多いですよ。神事や仏事のイメージが強いシキミですので、お祝いごとの贈り物としては不向きかもしれません。しかし故人の誕生日が3月22日である場合などに利用すると、いい香りで故人を偲ぶことができるかもしれませんね。シキミの花言葉にあった贈り物のシーン
ここからはシキミの花言葉にあった贈り物のシーンをご紹介します。シキミは長年仏教と深い関りがあった背景から、贈るのにふさわしくないシーンも存在しています。マナーを理解せずにシキミを贈ってしまい、後になってからそのマナー違反に気付いても取り消すことはできませんね。どのような場面で利用するのがふさわしいのかしっかりチェックしてみましょう。キラキラした贈り物として贈られることは少ない
シキミは誕生日や開業祝いなどのきらきらとしたシーンでの贈り物として利用されることは少ない植物です。なぜなら神事や仏事に利用されることが多いからですね。お祝いごとで利用すると相手の気分を害することもあるかもしれません。TPOをよく考えてから利用するといいでしょう。葬式や法要の仏事で使われる
シキミを贈るのにふさわしいシーンは、葬式や法要などの仏事です。その毒性や香りから「悪霊から死者を守る」「邪気を払う」などと、古くから考えられてきました。またその香りは獣の嫌うニオイのため、土葬した遺体を掘り起こさないようシキミをたむける習慣もありました。シキミに似た植物として榊(サカキ)がありますが、シキミとは異なる植物です。どちらも古くから日本人と深い関係のある植物ですが、シキミは主に関西地方の神事や仏事で利用されることが多いようですよ。「援助」という花言葉には「故人が極楽浄土へ無事にたどり着けるように。」という気持ちも込められているため、葬式や法要などの仏事はシキミを贈るのにふさわしいシーンであると言えるでしょう。お墓参りをするときに
お墓参りをするときも、シキミを贈るのにふさわしいシーンです。神社やお寺の境内で栽培されていることも多く、神聖な樹木として考えられているからです。地方によってはシキミを大きな花輪にし、お供えすることもありますよ。抹香や線香の香りがするシキミは、お清めの効果もあると考えられています。地域によっては盛り塩のようにシキミを玄関先に置くこともあるのだとか。お墓参りはシキミを贈るのにふさわしいシーンであると言えるでしょう。小さい子供やペットがいる相手には避けた方が良い
葬式や法要などの仏事やお墓参りは、シキミを贈るのにふさわしい場面だとご紹介してきました。しかし何度も申し上げている通り、シキミには全体に強い毒性があるため、小さいお子さんやペットがいる相手には贈らない方がベターでしょう。小さいお子さんやペットがいつ口にするとも限りません。シキミを飾っていた花瓶の水を飲んでしまい、神経症状が出てしまった例もありますよ。シキミの危険性を十分に理解し、取り扱い方法を心得ている大人だけのご家庭へ贈るようにしましょう。くれぐれも注意してくださいね。シキミの贈り物の体験談
シキミの花言葉にあった贈り物のシーンのご提案をしてきました。ここからは実際にシキミを贈った方の体験談をご紹介します。実際に贈った方のエピソードですので、シキミを贈る際のマナーなどについても確認できますよ。ぜひ参考にしてくださいね。お仏壇に飾ってもらうように贈った
まずお仏壇に飾ってもらうように贈った方のエピソードです。働いていたときに大変お世話になった上司が亡くなり、お葬式には行けなかったため後日お宅を訪問しました。そのときお仏壇に飾ってもらえるよう、シキミを持参。そのままでは少々味気ないため、お花屋さんで菊などに添えてシキミを入れてもらいました。どれだけ上司にお世話になったか奥様にお話しでき、よいお別れができたと感じました。
シキミは長持ちしやすい植物です。より長い期間、感謝の気持ちが伝えられますね。シキミを贈って良かったと感じるエピソードでした。
伯父のお仏壇に飾ってもらえるようシキミが入った仏花を贈りました。実はこれはアーティフィシャルフラワー(造花)なのですが、非常に精巧に作られた造花で、生花に勝るとも劣らない品質のものでした。伯母は高齢のため毎日の水替えは負担になると思い、アーティフィシャルフラワーのシキミを贈りましたが、関西出身の伯母もシキミに込められた意味を理解しているためとても喜んでもらえましたよ。
夏場はお供えの花も長持ちしないもの。また高齢の方にとって毎日の仏壇のお世話は負担になる場合も考えられます。そんなときにはアーティフィシャルフラワー(造花)のシキミを贈るのも良い方法でしょう。一時的な花飾りとして利用できますし、相手の負担も減らせますね。
代わりにお墓参りに行ってもらうときに
つづいて代わりにお墓参りに行ってもらうときにシキミを準備したと言う方のエピソードです。親族のお墓参りの予定があったものの、仕事の都合でどうしても行けないことがありました。代わりに家族に行ってもらうことになったのですが、その際にシキミを添えた供花を準備しました。故人にはとてもお世話になったため、シキミの花言葉「援助」に極楽浄土への安らかな道を歩んでほしいとの気持ちを込めました。
花言葉に想いを込めシキミを贈ったエピソードです。お墓参りには参加できなかったけれど、故人にきっと気持ちは伝わったのではないでしょうか。
友人のお父さんが亡くなったことを知らされました。大変お世話になったのですが遠方だったためお墓参りには行けず、せめて生前の感謝の気持ちを伝えたいとシキミを入れた供花を宅配で贈りました。シキミを含め供花は花もちがいい植物が多いため、きれいな状態であちらへ届いたようです。時期を改めてお墓参りに行く際は、シキミを添えたお花を自分で持参し、墓前に供えたいと思います。
現在では光を当てると消臭・抗菌・ホルムアルデヒドの分解効果が期待できる「光触媒」のアーティフィシャルフラワーもあります。お仏壇に飾りながら消臭・抗菌効果が得られたら、相手のお役にも立て、気持ちのいい仏前となりそうですね。光触媒のアーティフィシャルフラワーのシキミも販売されているので、ぜひチェックしてみてくださいね。
最愛のペットを失くした友人へ供花として
さいごに大切なペットを亡くした友人へ、供花としてシキミを贈った方のエピソードです。家族同様にかわいがってきたペットが亡くなった友人。ペット用のお仏壇を用意し、悲しみと向き合う日々を送っていました。せめてもの慰めにとシキミを入れた供花を贈り、シキミの持つ花言葉「援助」のことを話しました。その悲しみはすぐには癒せるものではありませんが「きっとまた天国で元気に走り回っているね。」なんて少し笑顔を見せてくれました。
ペットを家族同然に大切にしている方の悲しみに寄り添ったエピソードでした。シキミの花言葉「援助」で、少しでも前向きになってほしいという、贈り主の方の気持ちが伝わるといいですね。
子どものころから一緒に育ってきた大切な猫が亡くなった友人。いつもそばにいたので「今頃あの子が寂しく鳴いていたらと思うと胸が締め付けられる…。」ととても苦しそうでした。そんな友人にシキミの入った供花を贈りました。古代から続いている弔いの植物であること、香りは亡くなった者を極楽浄土へ無事に送る意味も含まれていることなどを伝えると「由緒ある聖なる香りにあの子が守られていると思えば、少し気持ちが楽になるわ。」と言ってくれました。悲しみを少しでも和らげることができ、贈ってよかったと感じました。
残された人の気持ちにも寄り添えるシキミ。花言葉は明治初期に日本に入ってきた習慣ですが、その神々しい香りや特徴から、古代の人々も悲しい別れに供える植物として自然とシキミを選んでいました。何世代にも渡って、悲しみを共に乗り越えてきた植物と言えるでしょう。
【まとめ】シキミの花言葉とは?由来や贈り物のシーン、体験談を徹底紹介
今回はシキミの花言葉やその由来、花言葉にあった贈り物のシーンをご提案してきました。 今回の記事のポイントは- シキミは東アジアが原産地であるシキミ科の植物で、1年中緑を絶やさない常緑性。
- 3月~4月に3㎝程度の白または黄色の花を咲かせる。
- シキミの花言葉は「援助・甘い誘惑・猛毒」となっており、少し危険なイメージがある。
- シキミの花言葉「援助」は、シキミが抹香や線香に利用されていることから、故人が極楽浄土へたどり着けるよう援助するという想いから由来している。
- シキミの花言葉「甘い誘惑・猛毒」は良い香りがありながら強い毒性を持つシキミの特徴から由来している。
- シキミは神事や仏事に多く利用されるため、お祝いごとなどで贈られることは少ない。
- 花言葉に合った贈り物として、葬式や法要などの仏事、またはお墓参りなどで多く利用される。