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観葉植物、特にランの栽培で活躍してくれる水苔(ミズゴケ)。土を用いる鉢栽培よりも見た目がすっきりしていて、かつ清潔感があり、水苔栽培が好きという方も多いですね。苔玉にすればテラリウムでも楽しめ、おしゃれ度もアップして、インテリアグリーンとして活躍してくれます。保水力も抜群の水苔ですが、カビ問題に悩まされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。水苔にカビが発生してしまうと見た目にも不衛生感があり、また植物への影響も心配ですよね。水苔のカビ発生を抑制して、上手に植物を育てたい!という方のために、今回は水苔のカビについて解説していきます。
本記事を読むと
- 水苔の優れた点
- 水苔の弱点
- 水苔の上手な管理方法
- 水苔のカビの対処法
- 水苔のカビの予防法
がよく分かるようになります。
現在水苔栽培に挑戦されている方で既にカビ問題に悩まされている方、水苔栽培にトライしたいという方、ぜひ本記事を最後まで読み、今後の参考にしてみて下さい。
植物の生育に活躍する水苔とは?
水苔のカビについて解説する前に、まずは水苔とはどんな植物なのかについて確認しておきましょう。
水苔とは、湿地で生育している緑色の葉をしたコケ植物
水苔は、我々がよく目にするコケ、すなわち石などに発生している山苔とは別のコケ植物で、水辺などの湿地に密集して生えています。北半球の熱帯から寒帯にかけて広く分布して自生しており、その数は150種を超えるとも言われています。日本にも水苔は自生しています。しかし、日本に自生する水苔は保護対象になっており、採取は不可能なのです。そのため、園芸などに用いられる園芸資材としての水苔は、主にニュージーランド産のものを使っています。
保水性と排水性、通気性に優れ、乾燥水苔は園芸資材としても使われる
水苔は採取後そのまま用いるものではありません。よく乾燥させてから園芸資材として用います。
ところで、水苔が園芸資材として好まれるのには以下の理由があります。
- 水はけや水持ちのバランスに優れている
- 排水性に富んでいる
- 柔らかいので根を傷める心配がない
- 優れたイオン交換性を持つ
水苔は表面に沢山の穴を持っており、そこに水を貯め込むことで保水性を高めることができるのです。いわば、自然のスポンジといったところでしょう。その保水性は、なんと乾燥した時の重量の20倍もの量の水を貯えることができるとも言われています。また、穴を通じて優れたイオン交換性を発揮してくれるので、根回りの環境を整える働きにも期待できます。土は自らイオンバランスの調整をしないといけなく大変ですが、水苔ではイオンバランスを心配する必要がない点、初心者にも向いていると言われるのです。
乾燥水苔はカビが生えてしまう可能性もある
ここまで水苔についての基本的な情報を見てきました。園芸資材として用いる乾燥水苔は高い保水性を有していますが、その分カビの発生率が高いのも事実です。では、どんな時によりカビが発生しやすくなるのか見ていきましょう。
保水性や排水性の高い水苔だが、傷みやすくカビの発生もある
乾燥水苔は、自身の重量の20倍の水を貯蓄することができる高い保水性を有しています。だからこそ、余計な水分や湿気はカビ発生の原因になってしまうのです。
湿気が苦手な水苔はカビを招く
水苔はしっかり乾燥させてから用いていることからも分かるように、湿気が苦手です。湿気がある環境ではカビ発生はもちろん、水苔自体の腐りを進行させる恐れがあるので気を付けなくてはいけません。
特に、水苔を使用する際に余ってしまった水苔を管理する時に気を付けた方が良いです。少しでも水分を含んでしまっていたり、水苔を管理する袋が湿っていては水苔にカビが生えてしまいます。もし、未使用な水苔が少しでも湿気を持っているようであったら、しっかり乾燥させた上で、清潔なビニール袋に入れ、密封して保管するようにして下さい。
水苔から臭いが発生している場合はカビによる腐敗
触った感触では分からなかったりしても、もし鉢の中から異臭がしている場合は、水苔が腐っているかもと疑いましょう。水苔が腐る原因は水の与え過ぎが原因だと考えられます。余分な水分はカビ発生を促し、水苔そのものの腐敗を招いてしまうのです。ついつい土の時と同じ感覚で水を与えてしまいがちですが、水苔を使用する際は少なめに水を与えるのがポイントになってきます。
水苔にカビが生えやすい条件
水苔のカビ発生に関して、特に気を付けたい時期や状態があります。
梅雨のじめじめした時期
梅雨のじめじめな時は、どんな植物もカビが生えやすい状態にあります。特に、もともと湿気を嫌っている水苔にとって梅雨の時期は最悪なシーズンと言えるでしょう。窓のそばに置いておくとより湿気が鉢の中にこもりがちになるので、梅雨の時期はできるだけ乾燥している空間を探し、そこで管理するようにしましょう。
水を与えすぎて水苔が常に湿っている状態
水苔は水を沢山含むことができる分、多少水を与えたぐらいではあまり湿り気を感じることができません。しかし、土ではないので、水苔そのものが少し乾燥しているかなぐらいで大丈夫なのです。逆に、土のように多少の湿り気が出るまで水を与えてしまうと、与え過ぎになってしまいます。それが常時続く状態になってしまうと水苔を腐敗させてしまうので気を付けて下さい。乾燥水苔という名前がついているぐらいです。水苔は乾燥気味に使うのが正解なのです。
水苔がカビた時の対処方法
水苔にカビが発生しやすい条件に付いてみてきました。それでは、実際に水苔にカビが発生してしまった時にはどうしたら良いのでしょうか。対処法について見ていきましょう。
対処法①カビの生えた部分を取り除く
カビは見つけ次第除去しましょう。そのまま放置しておくとあっという間に広がり、植物そのものを傷つけてしまいます。
洗い流したり、手で取り除こう
水苔のカビの除去では薬剤の使用はできるだけ避けます。薬剤を使用してしまうと、水苔から栄養と水分をもらっている植物に悪影響を及ぼしかねないからです。
カビは「水で洗い流す」、「手で取り除く」といった手作業で除去していきましょう。部分的に取り除くだけで大丈夫です。
他の植物に影響がなければカビだけを取り除く
水苔は土の代わりに用いる園芸資材です。そのため、苔そのものに薬剤を投入したり、余計なものを与えたりといったことはしません。水苔に生えてしまったカビは、見つけ次第手作業で除去するだけで十分です。毎日きちんと観察し、カビ発生の有無を確認しましょう。もし毎日カビが同じところに発生するようであれば、そこに湿気が溜まりやすいということです。鉢の中の風通しを確認し、その部分に湿気がこもらないよう工夫してみて下さい。
また、植えている植物にカビの影響が見られないのであれば、表面上のカビを取り除くだけで問題ありません。
対処法②植え替えをする
水苔は一度使ったら使いっぱなしで良いというものではありません。スポンジも何度も使っていると水吸い力が弱まるように、水苔も同じく消耗品なのです。
水苔は1~2年で植え替えが必要
乾燥水苔の寿命は大体2年ほどと言われており、できれば1年に1度の植え替えをするのが良いとされています。植え替えをせずそのまま使っていると水持ちや水はけが悪くなり、植物を傷めてしまう原因になります。
同じ鉢への植え替えで問題ないが、鉢についたカビは落として消毒しよう
植え替えする際に同じ鉢を用いて問題ありません。しかし、カビの発生がよく起こっていた水苔を入れていた鉢は一度しっかり洗浄し、消毒することをお勧めします。特に、素焼き鉢での栽培をしている場合は注意が必要です。素焼き鉢は、鉢自体が水分を吸収しやすくなっていることもあり、鉢の表面にカビが発生する傾向にあります。よくよく洗浄し、カビの胞子を残さないようにしましょう。
また、植え替える際は鉢に対する水苔の高さにも気を付けましょう。鉢の縁よりも低い位置に水苔のトップがきてしまうと、水苔の表面が乾燥しにくい状態になってしまいます。できるだけ、鉢の縁の位置に水苔がちょっと出るぐらいを意識して植え替えしてみて下さい。
乾燥水苔の正しい管理方法
水苔にカビが発生してしまった時の対処法について見てきました。しかし、できればカビには遭遇したくないですよね。正しい乾燥水苔の管理方法を知り、水苔のカビ発生を予防しましょう。カビとは無縁の水苔栽培を楽しむためにも、ここで正しい乾燥水苔の管理方法を学びましょう。
①水やりの方法
乾燥水苔の管理で大事なのは水分量の調整です。
水苔がしっかり乾いた状態でたっぷり水やり
水苔はできるだけ乾燥させながら用いましょう。水やりの際は、水苔を触り、しっかり乾燥をしていることを確認した上でたっぷり水やりをして下さい。少しでも湿っているならば、まだ水やりの時ではないです。
秋冬の過湿による根腐れやカビに注意
湿気に注意するのは梅雨のシーズンだけではありません。秋、冬、一年を通して水苔の湿気には気を付けなくてはいけません。特に冬場、部屋が乾燥しがちで過湿されている方も多いでしょう。そのような環境で乾燥水苔を使用していると、水を大して与えずとも水苔が湿気てしまいます。その状態を放置しておくと、カビ発生はもちろん、根腐れの原因にもなるので気を付けましょう。根腐れが起きると、異臭が鉢から放たれることがあります。もし、鉢から変な臭いがするなという時は根腐れを疑ってみましょう。そして、早めの処置をし、カビや根腐れがそれ以上広がらないように気を付けましょう。
②日当たり
湿気を嫌う水苔ですが、日光にはあまり耐性がないので、直射日光には当てずに管理しましょう。
直射日光の当たらない暖かい場所を好む
水苔は湿地帯に生息する植物ということもあり、直射日光には弱いので気を付けましょう。管理する際は、直射日光の当たらない暖かい場所が良いです。時々日光浴させてあげることで、乾燥水苔の湿気を飛ばす効果も得られます。また、日光浴は植物の成長には欠かせないものなので、適度に日光浴させてあげましょう。
長期間の日陰はよくない
水苔は日光に弱いとは言っても、適度な日光浴は必要です。長期間日陰に置いておいては、水苔の状態が悪くなることはもちろん、栽培している植物の成長を妨げることにもなります。水苔そのものを栽培されるという方はいないと思うので、育てている植物の成長や管理方法に合わせて適度な日光浴を取り入れて下さい。
③肥料のやり方
水苔には肥料が必要なのか悩まれる方もいるでしょう。水苔には肥料は必要ありませんが、栄養剤は使っても良いです。
水苔には根がないため、肥料が必要ない
水苔には根がないので肥料を与えても吸収することができません。水苔の役目は栄養を与えるというよりも、水分を植物に与える働きにあるので、水苔そのものに肥料を与える必要はありません。
植え付け時に、栄養剤を水に混ぜよう
肥料を与える代わりに、植物を植え付ける時に水に栄養剤を混ぜておくと良いでしょう。こうすることで、水苔にも栄養が回り、植物にも栄養入りの水が入るので、生育に良いです。ただし、肥料がかなり必要な植物を育てる際には、乾燥水苔を苔玉として用いることをお勧めします。肥料のたっぷり入った土を丸くかため、そこに植物を植えます。土が崩れないよう、その周りに乾燥水苔を巻き付けることで苔玉が完成します。苔玉は土の崩壊を防ぎ、かつ保水性を保つという利点があります。見た目もおしゃれなので、ぜひ試してみて下さい。
乾燥水苔は植物の植え込みに最適
ここまで乾燥水苔について、カビの発生原因、正しい水苔の管理方法、カビへの対処方法などをみてきました。最後に、乾燥水苔がどんな植物の植え込みに最適なのかをご紹介してきます。今後の植物栽培の参考にしてみて下さい。
ラン類
水苔栽培の王道とも言えるのがラン類です。
胡蝶蘭
胡蝶蘭は根回りの環境にとても敏感な植物です。排水性に富み、かつ保水性もある場を好み、かつ根を傷つけない柔らかい環境を求めます。これに合致しているのが水苔です。そのため、ラン類、特に胡蝶蘭の植え込みでは水苔が頻繁に用いられるのです。
ビカクシダ
コウモリランの愛称で知られるビカクシダも水苔栽培に向いている植物です。ビカクシダは元々肥料をあまり必要としない植物なので、水苔の植え込みでも十分成長させることができるのです。特にビカクシダはその容姿から様々な場所に植え込みして、インテリアグリーンとして楽しまれる人気の植物です。壁掛けアレンジなどの際に土を用いると部屋が汚れる恐れがありますが、代わりに水苔を用いることでクリーンに植え込みを成功させることができるのです。
多肉植物
水苔は通常の鉢栽培とは異なり、土独特の臭いがしなくて好きという方も多いです。また、テーブル周りにインテリアグリーンとして多肉植物や観葉植物を置く際にも、土の鉢では倒してしまった時の処理が大変ですが、水苔ならばそんな心配もいりません。
アガベ
ちょっとトゲトゲしている葉が可愛らしいアガベは水耕栽培にも向く多肉植物として知られ手ります。アガベは肥料が無くても育つので、水苔での栽培も可能です。ただし、水苔栽培する際には風通しに気を付けましょう。すぐに空気がこもってしまう状態だとカビが発生し、異臭が放たれる恐れがあります。クリーンに植物を楽しむためにも、カビ発生には注意して下さい。
ハオルチア
ぷっくりとした葉が人気のハオルチアは、テーブルに並べるととても可愛らしく、癒されると人気が高い多肉植物です。テーブルの上で育てていきたいからこそ、よりクリーンな方法で栽培したいという方におすすめなのが、水苔栽培です。ただし、こちらも通気性を重視しないとカビ発生の原因になってしまうので気を付けましょう。
まとめ
水苔(ミズゴケ)のカビについてここまで解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今一度本記事のポイントを振り返っておきましょう。
- 水苔は乾燥させて用いるのが基本
- 水苔は排水性と保水性に優れており、ラン栽培に適している
- 水苔にカビは水分過多と湿気が主な原因
- 水苔のカビ予防のためにも乾燥気味に管理するのが大事
- 水苔が水分を含んだ状態で用いていると根腐れの原因になる
- 水苔にカビが発生したら、発生している部分だけ手作業で除去する
- 水苔のカビ除去に薬剤を用いてはいけない
- 水苔を使用する際は、鉢の高さよりも低くならないよう気を付ける
- 水苔にカビを発生させないために通気性に気を付ける
以上のことを念頭に、水苔栽培にトライしてみて下さい。水苔栽培にカビは付き物といっても過言ではありません。カビが生えてしまっても「もうだめだ」と思わず、正しく処置して栽培を続けてみて下さいね。
鉢植えだとあまり水苔が見えませんが、テラリウムなどの透明な容器、花器に入れれば、水苔そのものも楽しむことができますよ。
最後までお読みいただきありがとうございました。TOKYO KOTOBUKIENには他にもたくさんの記事をご用意しておりますので、ぜひご覧ください。