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ガーデニングや家庭菜園を続けていると必ず使用する肥料。一般的な園芸店やホームセンターで購入することができますが、お家の生ごみなどから作ることができたら安心して使えますね。実際近年では、地球温暖化の観点からもエコな自家製の肥料づくりが注目されています。生ごみ処理機の購入など、検討したことがある方も多いと思います。しかし、肥料の正しい知識や作り方が分からないとうまくできるか不安ですよね。
家庭で肥料を作るには何が材料として使えて、作り方にはどのようなポイントがあるのでしょうか。
そこでこの記事では、
- 肥料を家庭で作ることは可能なのか?
- 家庭でできる堆肥の作り方
- 家庭でできるぼかし肥料の作り方
- 雑草を使ったオーガニックな土の作り方
- 肥料で使われる糞について
- 肥料で使われる生ごみについて
- 肥料で使われる葉や木について
上記について詳しく解説していきます。この記事を最後まで読んで頂ければ、自家製肥料の作り方が分かります。また合わせて、肥料作りに用いられるさまざまな材料の特徴についてもご紹介していきます。これから肥料づくりにチャレンジしようと考えている方の参考にして頂けたら幸いです
そもそも肥料は家庭で作れる?
家庭菜園をしていくうえで重要な役割を担う肥料ですが、家庭で作ることはできるのでしょうか。肥料の種類とともに見ていきましょう。
家庭でも簡単に肥料を作ることは出来る
結論から申し上げますと、家庭でも簡単に肥料を作ることが可能です。特別なものを用意する必要もなく、食べ物の残りかすなどの生ごみから手軽に作ることが出来ます。安心安全な肥料で植物を元気に育てたい方は、この後ご紹介する作り方を参考にして是非肥料作りにチャレンジしてみてください。
作れる農業用の肥料は主に「堆肥」と「ぼかし肥料」
家庭で作れる農業用の肥料は「堆肥」と「ぼかし肥料」になります。「堆肥」は有機質の廃棄物を分解して作る肥料です。落ち葉などを使った植物性と、牛糞などを使った動物性があり、土壌を改良して植物に栄養を供給します。一方で「ぼかし肥料」は動植物の残骸などを原料とし、微生物によって分解発酵させて作る肥料です。施すことで継続的に改良し続ける効果が期待できます。
自治体によっては生ごみ処理機などに助成金が出る
自治体によっては、コンポストや生ごみ処理機の購入に対して助成金が出る場合があります。購入時のレシートは、申請に必要になることが多いので大切に保管しておきましょう。地域ごとで金額などの支援内容や条件は異なりますので、詳細は各自治体のホームページを確認してみてください。
「アンモニア肥料」など家庭で作れない肥料も多くある
肥料の成分や種類によっては家庭で作れないものもあります。例えば窒素を供給して植物の健康的な成長をサポートする「アンモニア肥料」を作るには、高温高圧での反応が必要となります。そのため専門的な設備が必要となり、一般家庭では危険な化学反応が発生する恐れがあるので注意が必要です。
家庭で肥料を作ることでエコ意識に繋がる
家庭で食品廃棄物や生ごみをリサイクルし肥料を作ることで、地域ゴミの削減や自家製肥料の使用が促進されます。同時に農薬や化学肥料の使用頻度が減り、エコ意識や環境への配慮に繋がります。有機肥料を手作りして持続可能な生活への一歩を踏み出しましょう。
家庭で簡単に出来る堆肥の作り方
家庭で肥料を作れることが分かったところで、ここからは堆肥の作り方を解説していきます。堆肥は肥料効果は少なく、主に土壌改良を目的として使用されます。実際に堆肥を作る際に必要なものや、具体的な手順をまとめましたので参考にしてください。
堆肥を作るのに必要なもの
堆肥を作る際に必要なものは以下の通りです。今回は手軽に段ボールで作るダンボールコンポストの作り方でご紹介しています。
ダンボール(バケツでも代用可能)
なるべく厚みのある丈夫なダンボールが適しています。強度が不安であれば、底を2重にすると安心です。ダンボールがなければバケツでも代用できます。
ピートモス
土壌改良に重要なピートモスを用意します。ピートモスを使用することによって、保水性と通気性を兼ね備えた酸性の土を作ることが出来ます。
炭
ピートモスと一緒に使うくん炭も必要です。くん炭も保水性と通気性に優れており、微生物にとって過ごしやすい環境を作るのに役立ちます。
布(ダンボールを覆える大きさ)
害虫対策のための不織布などがあると便利です。なるべく通気性の良いもので、ダンボールをしっかり覆える大きさがあれば十分です。
生ごみ
家庭で出る生ごみを使用します。微生物が分解しやすい野菜くずなどが適しています。
新聞紙
すき間から土や生ごみがこぼれないように、ダンボールの底に敷く新聞紙を用意します。
堆肥の作り方
堆肥の作り方は以下の通りです。自家製堆肥の作り方のポイントをおさえてきましょう。
①:ダンボールの底に新聞紙を敷く
ダンボールの底から土や生ごみがこぼれないように、新聞紙を敷きます。ガムテープで底を留めておくと、すき間をふさぐことが出来て強度も増すのでおすすめです。
②:生ごみの水気を切ってコンポストに入れる
臭い対策にもなるため、生ごみの水気を適度に切ってからコンポストに入れます。生ごみはなるべく細かくして入れると、分解されるまでの時間を短縮できます。投入量は1日につき、500~800g程度にしてください。
③:コンポストに土を入れて炭とピートモスを入れて混ぜ合わせる
コンポストに土を入れ、発行を促すために炭とピートモスを2:3の割合で入れてよく混ぜ合わせます。この時かなり土埃が舞うので、気になる方はマスクや眼鏡を用意しておくと良いでしょう。
④:虫が入らないように布で覆う
コンポストに虫が入ってしまうと卵を産みつけてしまうため、しっかりと管理する必要があります。通気性の良い布でダンボールの外側をしっかり覆って虫の侵入を防ぎましょう。
⑤:3日に1度かき混ぜ、1か月ほど熟成させる
3日に1度は必ずコンポストの中身を混ぜて分解を促進させ、1か月ほど熟成させます。熟成期間は季節や環境によって異なり、夏季は2週間~1か月、冬季は1か月~2か月程度が目安になります。
⑥:水気が無くなりさらさらになったら完成
熟成期間が終わったら、コンポストの中の生ごみの形が無くなっているか確認します。さらに水気も無くなり、さらさらの状態になっていたら完成となります。堆肥として使用可能です。
家庭で簡単出来るぼかし肥料の作り方
次にぼかし肥料の作り方を解説していきます。肥料の材料を直接土壌に施すと、アンモニアガスが発生し植物の生育を阻害するため、あらかじめ分解・発酵させぼかし肥料にして使用します。実際にぼかし肥料を作る際に必要なものや、具体的な手順をまとめましたので参考にしてください。
ぼかし肥料を作るのに必要なもの
ぼかし肥料を作る際に必要なものは以下の通りです。今回は米ぬかを使ったぼかし肥料の作り方でご紹介します。
米ぬか
米ぬかは精米する時に玄米の表面が削られて粉状になったものです。ぼかし肥料の主原料である米ぬかは購入することも可能ですが、近くにコイン精米機などがあれば無料で手に入れることが出来ます。
油粕
油粕は窒素分を多く含む有機肥料です。米ぬかに油粕を混ぜることで、三大栄養素である「窒素・リン酸・カリ」をバランスよく含んだぼかし肥料を作ることが出来ます。
カキ殻石灰
カキ殻石灰は扱いやすく、初心者でも使いやすい石灰肥料として知られています。カルシウムなどのミネラル分を補い、土壌改良に役立ちます。
em菌(発酵促進剤)
em菌は、乳酸菌や酵母菌などの善玉菌の総称です。基本的には米ぬかと水だけでも発酵は可能ですが、em菌などの発酵促進剤を使用すると発酵分解作用を早めることができます。
水
材料を混ぜる際に水を注ぎます。少しずつ均一に注ぎやすいように、ジョウロなどに入れて準備しておくと良いでしょう。
ぼかし肥料の作り方
ぼかし肥料の作り方は以下の通りです。自家製ぼかし肥料の作り方のポイントをおさえておきましょう。
①:用意した材料をすべて混ぜ合わせる
容器に米ぬかや油粕、その他すべての材料を混ぜ合わせます。この時にムラなくしっかり混ぜておくことが大事なポイントです。作業は素手で行っても問題ありません。
②:混ぜ合わせた材料に水を加える
容器の中の材料が混ざったら水を投入していきます。ダマにならないように、なるべく均一に水を加えながら水を浸透させていきましょう。
③:腐敗の原因になるので水は少しずつ加える
水の量が多すぎると腐敗の原因になるので注意が必要です。一度にたくさんの水を投入すると失敗しやすいため、慎重に少しずつ加えていきます。
④:手で握って崩れるぐらいを目安調整する
材料を水を加えながら混ぜてちょうどいい状態になるように調整します。手で握ると固まり、指で押すとパラパラと崩れるくらいの硬さが目安になります。
⑤:ナイロン袋に入れて密封し日陰で発酵させる
混ぜ合わせた材料はナイロン袋に入れて密封し、直射日光を避けた日陰で発酵させます。材料が酸素に触れると、水と二酸化炭素に分解されて発酵させることができません。しっかりと空気を抜き、密封することが大切です。
⑥:発酵が十分に行われたら乾燥させて水分を飛ばす
気温によって発酵速度は異なりますが、基本的に夏季なら1か月、冬季であれば2~3か月程度になります。発酵が十分に行われたら、袋から出して薄く広げ、風通しの良い場所で乾燥させます。塊があれば崩して、水分が完全に飛んだら土嚢袋などに入れて保管しましょう。
畑でも出来る!雑草を使ったオーガニックな土づくり
堆肥やぼかし肥料が家庭でも簡単に作れることがお分かりいただけたと思います。ここからは、夏の畑仕事でもある草刈りで出た雑草を使うオーガニックな土づくりについて解説していきます。
必要なもの
雑草を使ったオーガニックな土づくりに必要なものは以下の通りです。
雑草(落ち葉や稲藁も大丈夫)
草刈りで出た雑草は立派な堆肥になります。落ち葉や稲藁でも問題なく使えます。雑草は同じものばかりでなく、多くの種類が混ざった方が栄養バランスが良くなります。
米ぬか
米ぬかは、雑草や落ち葉だけでは不足しがちなリン酸を補うために必要です。また、発酵を促す効果も期待できます。米ぬかが無ければ油粕でも代用可能です。
砕いた炭
土に混ぜやすいように細かく砕いた炭を使用します。多孔質の炭は微生物の住処となり、有害物質なども吸着してくれます。さらに保水性や通気性を調整し、土壌改良に役立ちます。
木酢液(10倍に薄めたもの)
木材を炭化して木炭を作る過程で得られる木酢液を10倍に薄めておきます。米ぬかなどの有機質肥料と併用することで、有用微生物の増殖がより促進されます。
作り方
雑草を使ったオーガニックな土の作り方の具体的な手順は以下の通りです。
①:畑に雑草を埋めるスペース分掘る
畑に雑草を埋める穴を25cm程の深さで掘ります。平積みでも良いですが穴埋めの方が早く土に還るので、様々な野菜の定着に間に合わせることができておすすめです。
②:掘った場所に雑草、米ぬか、砕いた炭を入れる
穴が掘れたら雑草、米ぬか、砕いた炭を混ぜたものを入れます。混ぜる作業が大変であれば交互に重ねて足で踏んでも良いです。この時、よもぎなどの根や分解しづらい枝などは取り除きます。
③:木酢液をかける
雑草などが全て入れ終わったら、10倍に薄めた木酢液を散布します。全体的にまんべんなくかけて有用微生物を増殖させましょう。
④:上に土をかけて埋める
木酢液をかけたら、上に畑の土を乗せていきます。草が見えなくなるようにしっかり土をかけて埋めるようにしましょう。
⑤:かまぼこ上に畝立てをする
最後にかまぼこ上に畝立てしたら作業は完了です。気温が低い日が続くようであれば、ビニールシートなどを被せておくと分解が早く進みます。基本的には雨ざらしで問題ありません。
肥料で使われる糞
肥料として使われる家畜糞にはさまざまな種類があり、目的に合わせて選ぶ必要があります。ここでは、それぞれの肥料の特徴や効果などについてご紹介していきます。
牛糞
牛糞自体は肥料成分は比較的少なく、分解もゆるやかなのが特徴です。含まれる繊維の量が少ないので土壌改良効果は低いです。しかし、牛糞堆肥と植物質堆肥であるバーク堆肥を混ぜた牛糞バーク堆肥であれば、肥料効果や土壌効果が期待できます。
馬糞
一般的に馬糞と植物性資材の割合は1:9なので、土壌微生物が活性化しやすくなります。窒素、リン酸、カリが多く含まれており、元肥に用いられることが多いです。通気性や保水性を向上させ、他の家畜糞と比較して土壌改良効果が高いと言われています。
鶏糞
鶏糞は比較的低価格でありながら栄養価が高く、効果にも即効性がある有機肥料です。窒素、リン酸、カリを豊富に含み、マグネシウムやカルシウムなどの微量要素も含まれています。作物の成長に欠かせない肥料の一つです。
うさぎのふん
うさぎのふんは、あまり知られていないかも知れませんが実はとても優秀な肥料です。植物の三大栄養素が、牛糞や馬糞の4倍、鶏糞の2倍含まれており、家畜糞堆肥の中でもダントツの栄養価を誇ります。元肥として土に混ぜ込んだり、置き肥にしたりそのまま使えるのもうさぎのふんの大きな特徴です。
象の糞
象の糞の肥料は、有機物100%の緩効性肥料になります。大量の食物繊維を含むため、土の保水性や通気性の向上に役立ち、高い土壌改良効果を持つ動物性堆肥です。堆肥化する際には100℃近い高温で発酵させているため、においがほどんど気になりません。
人糞尿(江戸時代に主流)
人糞尿の栄養成分ははそれほど高くはないものの、肥料として有効なため江戸時代には盛んに使用されていました。江戸時代以降もしばらくは人糞を肥料にするために畑に肥溜めがあり、自然発酵させているのがごく普通の光景でした。現在では人糞尿の使用には条件が多くありますが、禁止では無いようです。
肥料で使われる生ごみ
家庭で出る生ごみには、肥料として使用できるものがたくさんあります。それぞれの肥料の特徴や効果についてご紹介していきますので、是非取り入れてみてください。
コーヒーかす
使用済みのコーヒーかすには、窒素が多く含まれているので肥料として有効です。コーヒーかすは多くの家庭で手軽に手に入るので使いやすいですね。使い方は基本的に2つあり、土に混ぜる方法と、水で薄めて液体肥料にする方法になります。使い方は簡単ですが、多く与えすぎてしまうと土壌の酸性度が高くなりすぎてしまうので適量に留めましょう。
米麴
米麴は一般的にぼかし肥料の材料などで使用することができます。米麴は発酵促進剤の役割を果たすため、微生物の活動を促進させることが可能です。米ぬかや水と混ぜると簡単に肥料を作ることができます。
米のとぎ汁(液体肥料として)
米のとぎ汁には、タンパク質をはじめさまざまな栄養分が含まれています。中には植物にそのまま利用できない成分もあり、毎日与えると悪影響を及ぼす場合があるため注意が必要です。米のとぎ汁を肥料として使用する場合は、ペットボトルに糖分などと入れて1か月程発酵させてから液体肥料として与える方法が推奨されています。
ウニの殻
ウニの殻には、無焼成カルシウムの他、マグネシウムやミネラルなどの微量要素が豊富に含まれています。これらの成分は植物の吸収を良くする働きがあり、成長を促します。ウニの殻は水に溶けにくいため、効果が長く続くのが特徴です。
おから(不要な場合)
おからは窒素成分が多く、土に直接撒いたり、ぼかし肥料の主材料として取り入れられたりしています。分解に伴って水分や悪臭が発生しやすく、腐敗するこ恐れがあり単品での堆肥化はあまりされていません。コーヒーかすなどと発酵させるとにおいが少なく使いやすい肥料になりますので、不要なおからがあれば、試してみてくださいね。
肥料で使われる葉や木
最後に肥料で使われる葉や木についてご紹介していきます。お金をかけずに入手しやすい材料なので、参考に見ていってくださいね。
落ち葉
落ち葉は古くから腐葉土として利用されてきました。落ち葉には目に見えない微生物がたくさん住んでおり、有機物を分解しています。その働きによってやわらかく栄養たっぷりの堆肥が作られます。作り方は簡単で、乾燥させた落ち葉をポリ袋に入れて、水と米ぬかをまぶし時々天地返しをしてください。
おがくず
おがくずは、主に牛などの糞尿で混合して自然発酵させた堆肥として使われています。また、牛糞と混ぜた完熟堆肥として販売されていることもあります。畑に使用することで、根群が発達しやすかったり、土壌の塩基バランスが安定する効果が期待できます。
【まとめ】家庭で簡単に肥料を作れる!作り方や肥料に使われるものを紹介
肥料の作り方について詳しく解説してきました。
本記事の内容は、
- 家庭の生ごみから「堆肥」や「ぼかし肥料」を簡単に作ることができる
- ダンボールに水気を切った生ごみと、土・炭・ピートモスを入れて1か月の間3日に一度かき混ぜながら熟成させると堆肥が完成する
- 米ぬかや油粕、カキ殻石灰・em菌を混ぜて適度に水を加え、ナイロン袋に入れて日陰で十分に発酵した後、乾燥させるとぼかし肥料が完成する
- 畑の草刈りで出た雑草に米ぬかと炭を加え、木酢液をかけて土を被せるとそのまま堆肥として使うことができる
- 農業には牛糞や鶏糞が多く取り入れられるが、うさぎのふんは植物の三大栄養素が非常に多く含まれている
- 家庭で出るコーヒーかすや米のとぎ汁などの生ごみも栄養成分があり、肥料効果が期待できる
- 落ち葉やおがくずも腐葉土などの堆肥として使われている
肥料は家庭で出る生ごみなどで作ることが可能です。土壌改良を目的とする「堆肥」や肥料効果も期待できる「ぼかし肥料」の作り方は簡単で、必要な材料さえ揃っていれば農業や家庭菜園に活用できるでしょう。今回ご紹介した肥料の作り方を参考にして、是非ご自身の生活スタイルのあった自家製肥料作りを楽しんでみてください。
東京寿園では他にも植物に関するたくさんの記事をご用意しております。植物の育て方や気になることがあれば、是非参考にしてください。最後までお読みいただきありがとうございました。