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料理のワンポイントに欠かせないハーブ。栽培するにも場所を取らないことから、ハーブ栽培を楽しむ方も増えてきました。ハーブは丈夫な植物なので、育成も比較的簡単なのですが、それでも稀に上手く育てることができなかったり、失敗してしまうこともあるのです。簡単に栽培できるはずなのに、何が間違っているのか分からないと、ハーブ栽培で悩まれてはいませんか。せっかく育てるなら、ハーブ栽培のポイントをしっかり押さえて、健康的で良質なハーブを育てて収穫したいですよね。そこで今回ポイントになってくるのが水やりです。ハーブは乾燥気味に育てれば良い、水やりは不要と思われているかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
本記事を読むと
- ハーブの育成と水やりの関係
- ハーブの水やり頻度
- 水やりがあまり必要がないハーブ
といったことが分かってきます。ぜひ最後まで読み、今後のハーブ栽培の参考にしてみて下さい。
ハーブの育生には水やりが重要!
ハーブ育生が上手くいくかどうかは水やりにかかっているといっても過言ではないほど、ハーブ育生と水やりには重要な繋がりがあります。
ハーブはその原産地から、基本的に水やりしすぎないことが多い
ハーブを上手に育てるには、ハーブを育てやすい環境を作ることが最も大切です。ハーブを育てやすい環境とは、つまり原産地の環境に近付けた育生環境を整えるということに他なりません。ハーブはアフリカや地中海沿岸でよく採られるものという印象がある方も多いでしょう。確かにハーブの多くは乾燥地帯で採れることが多いのですが、インドなど熱帯地帯で採れるものも少なくありません。特に、近年はエスニック料理が人気になっていることに伴い、日本でもインドなどで採れるハーブが多く栽培されるようになっています。乾燥地帯原産のハーブは乾燥させ気味に、逆に熱帯地帯原産のハーブは湿らせ気味に育てるようにします。
ハーブの原産地を知り、どのような気候で生まれた植物かということをよく理解することがハーブ栽培には欠かせないのです。
ハーブの水やりの回数や水量、注意するポイントを解説
本記事では、ハーブの水やり頻度について、回数、季節ごとの水やり方法、水量に至るまで詳しく説明していきます。先にも述べたように、原産地によって水やり頻度も多少異なってくるので、ここでは最もよく知られている乾燥地帯のハーブを例に解説していきます。
ちなみに、イタリア料理で欠かせないバジルですが実は地中海で採れるものではありません。熱帯アジアやアフリカなど熱帯気候の場所でよく栽培される植物なのです。そのため、水やり頻度を少なくしていると枯れてしまうことがあるので気を付けなくてはいけません。
ハーブの水やり回数と方法:季節ごとの水やり
ハーブと水の関係について見てきましたが、ここからは実際にどれぐらいの量の水を与えるべきなのか、季節ごとの水やりについて説明していきます。
春と秋:1日1回、午前中に水やりする
ハーブの水やりは、基本的に土の表面がよく乾いたら鉢底から水が流れ出るまで株元にたっぷり水を与える方法をとります。日本の春と秋はそこまで乾燥しない温暖な気候になるので、1日1回、午前中に水やりをすると良いです。
夏:1日2回水やりする
夏場はかなり土が乾きやすいので、1日2回水やりをするようにしましょう。
土表面が乾燥したら
土の表面が湿っているようであれば、無理に1日2回水やりをしなくても大丈夫です。しかし、土の表面がからっからに乾いているようならば、しっかり水やりする必要があります。特に、35度以上の猛暑日に限っては、1日3回水やりを行っても良いです。
根を傷めないよう注意
夏場はついつい水やりを頻繁にやりがちです。土の表面がなんとなく乾いている状態の時は、鉢底の土はまだまだ湿っている可能性が高いです。そんな時に追加の水を与えてしまうと根腐れが起こる可能性を高めてしまいます。枯れさせたくないからと水やりしたくなる気持ちは分かりますが、水やりのし過ぎもまた根を傷める行為になってしまうので気を付けましょう。
冬:1日1回又は週2・3回水やりする
冬場は1日1回、もしくは2日に1回ぐらいのタイミングで水やりするようにします。
頻度は低め、水量は少なめに
冬場は空気が乾燥しがちなので、水やりもいつも通りにやらなくてはいけないと思われがちです。しかし、空気が冷たくなるため土の水分は飛びにくくなります。土の表面を触り、まだしっとり湿っているようであれば、無理に水やりしなくて大丈夫です。しっかり乾いたと思ったタイミングで水やりをしてあげましょう。土は乾いていないけれど、葉がしなびているように思われる時は、葉水を与えましょう。葉の表面がしっとりするぐらい霧吹きで水を吹きかけてあげると良いです。
夕方以降に水やりすると凍結の恐れがある
夕方以降はより気温が下がります。ハーブの多くは暖かい地域で栽培されるため、耐寒性のないものも少なくありません。夕方以降、日が沈んでからの水やりは植物の熱を奪い、枯らしてしまう原因になるので、避けるようにしましょう。また、夕方以降にハーブの鉢に水滴が残っていると夜の間に霜がおりて凍結してしまう恐れがあるので、水やりは日中に行うようにします。
ハーブの水やり方法:植え方ごとの水やり
ハーブの水やり方法は植え方によっても異なります。ここでは、鉢植えやプランター栽培の際の水やり方法と地植えの場合の水やり方法に分けて説明していきます。
プランター・鉢植え
プランターや鉢植えの水やりは、上記の季節ごとの水やり方法にのっとって行いましょう。
植え付け時は水の量は多めに与える
最初に植え付ける時、植え替えしたての植え付け時には水をたっぷり与えるようにしましょう。プランターや鉢の底から水がしっかり流れ出るぐらいは与えて下さい。
活着したら土の表面が乾いてから
土にしっかり根を張り、活着したなら、水やりはタイミングを守って行います。ここでいうタイミングとは、「土の表面が完全に乾いてから」を言います。
鉢の土がこぼれないよう根元に水やりする
ハーブの鉢は果樹苗の鉢とは異なり小ぶりなものが多いです。樹木に水を与えるように勢いよくハーブの鉢に水を注ぐと、水の勢いで土は溢れ、ハーブそのものがダメになってしまいます。ハーブに水をやる際は、ハーブの根元にゆっくり静かに水を注ぐようにしましょう。水の勢いが良すぎてハーブに土の跳ね返りが付くと、そこからハーブが腐ることもあるので気を付けましょう。
地植えの場合
地植えのハーブは基本的に水やりは不要です。ただし、あまりにも雨が降らない日照り続きの場合は、適宜水を与えましょう。
基本的に水やり不要
畑や庭で育てる地植えのハーブのほとんどは地下40cmぐらいに根を伸ばします。そこから水分を吸収していくので、土の表面が完璧に乾いていてもしっかい水分確保はできるようになっています。
根元を中心に、土表面に水がたまる程度に水やりする
猛暑日や日照り続きでハーブの苗自体に活力が見られない時には、水やりを行います。水やりはハーブ苗の根元を中心に土の表面に水たまりができるぐらいに水やりをしましょう。
ハーブの水やりで注意すること
ここまでハーブの水やり方法について説明してきました。ここでは、ハーブの水やりをする際の注意点をまとめています。
ハーブの好む環境に合わせた水やりを行おう
ハーブの水やり方法は、これまで述べてきた内容が基本方法になりますが、原産地によって水やりの方法が異なってくるものも事実です。自分が育てるハーブの原産地の気候状況を知り、そのハーブに適した環境作り・水やりを実践するのが最も大切なことになります。
湿気を嫌うハーブ
タイム、セージ、ゼラニウム、ローズマリー、ラベンダー、ユーカリ、ネトル、ラムズイヤーなど
乾燥を嫌うハーブ
エルダー、バジル、レモングラス、ターメリック、ウコン、ドクダミ、マグノリア、サンショウなど
水やりの頻度を高くするとハーブの香りが落ちやすい
ハーブは各植物が持つ独特の香りも楽しむことができます。品種によって芳香の度合いが異なることもありますが、育て方で香りを強く引き出すこともできるのです。例えば、バジルなどは水やりを控え目にすると香りが強くなる傾向にあります。ただし、バジルはあまり乾燥を得意とするハーブではないので、水やりを控え目にする加減は初心者には難しいです。
ハーブの水やりは留守にする際はどうしたらいい?
せっかく上手に育てられたハーブは、留守中どうするのが良いのでしょうか。ここでは留守中のハーブの水やりについてちょっとした工夫をご紹介します。
「腰水」をしてハーブを回復させよう
留守中のハーブの水やりは腰水という方法で行います。
鉢底から水分を吸わせること
腰水とは、水の入った容器にハーブの鉢ごと付けて、下から水を吸い上げる方法を言います。枯れてしまったハーブや盆栽を生き返らせる方法にも用いられます。今後園芸やガーデニングにも挑戦したいという方はぜひ覚えておきましょう。
留守の際や水やりを忘れた際に
留守中はどうしても水やりはできません。冬場であればあまり水やりの心配はありませんが、夏場などはやはり水やりのことが気になるでしょう。そんな時は腰水をしていきましょう。夏場であれば2、3日はこの方法で持ちます。しかし、水そのものも熱い夏場はすぐに腐ってしまうので、4日目以降は水を交換した方が良いと言えるでしょう。ただし、腰水は留守中や長く水やりを忘れてしまった時に用いる、応急処置的な水やり方法です。この方法を常用してしまうとすぐに根腐れが起きるので、やり過ぎには気を付けて下さい。
腰水のやり方
- 深めのバットのような容器を用意する
- バットに鉢を乗せ、バットの中に水を注ぐ
- 鉢の1/3ぐらいまで水が来たら、水を注ぐのをやめる
- 2-3日ぐらいを目安に浸けておく
土の表面が湿れば回復のサイン!
長らく水やりを忘れてしまったハーブを腰水で復活させたい時、長期間水に浸けておくのが良いということではありません。完全に乾ききっている土の表面が腰水によって湿ってきたら回復が見込めるサインです。このタイミングで水から出して、いつものように管理してみて下さい。土の表面が湿ってもなお水に浸けたままにしてしまうと今度は根腐れが起こるので、くれぐれも忘れて水に浸けっぱなしにならないように気を付けましょう。
水やりの頻度が低めな育てやすいハーブ4選
ハーブを上手に育てるためには、水やりをきちんとしないといけないということが分かりましたね。でもちょっと難しそうという方のために、水やり頻度が少なくても丈夫に育つ有名なハーブを最後に4つご紹介します。
タイム
タイム(一般的にコモンタイムのことを言う)は、常緑低木で地中海沿岸や西アジア、北アフリカなどの乾燥地帯を原産地とするハーブです。乾燥地帯出身ということもあり、高温多湿にはめっきり弱い植物でもあります。そのため、水やりは最低限でよく、うっかり水やりするのを忘れてしまったぐらいでも全く問題ありません。日本の梅雨にはとても弱い植物なので、とにかく乾燥させながら育てるようにして下さい。室内で育てる際には、窓の結露にも注意しましょう。結露が多いと湿気の原因になってしまうので、結露が多い時期は窓辺から離れた室内で管理すると良いでしょう。
タイムは、加熱しても香りが飛ばないため、料理の香りづけや臭み消しに利用されるハーブで、キッチン栽培に取り入れている方も多いです。
セージ
セージは高さ60cmから80cmぐらいの常緑低木で、地中海沿岸やヨーロッパ、アジアなどの乾燥地帯を原産地とするハーブです。梅雨期の高温多湿に弱く、湿気で蒸れて葉が傷むと病害虫の原因になったり、すぐ根腐れしてしまうといった弱さもありますが、乾燥させ気味に育生すれば問題ありません。
セージは、薬用や料理に欠かせないハーブとして古代ギリシャ時代から用いられてきているハーブでもあります。豊富な品種を誇り、品種ごとに色味の違った花色を楽しめることから観賞用植物としての人気も高まっています。
ゼラニウム
ゼラニウムは、ニオイゼラニウムとも呼ばれ、ペラルゴニウム属のうち芳香のあるものの総称です。ナツメグの香りがするゼラニウム・ナツメグ、シナモンの香りがするナツメグ・シナモンなふぉ、色々な香りの品種があるのが特徴です。原産地は南アフリカで、乾燥を好みます。日本の梅雨のシーズンは蒸れやすいので、密生しないよう適宜間引きを行うようにして下さい。水やりのし過ぎは根腐れの原因になるので、極力水やりは控えましょう。また、冬は3℃以上ないと越冬できないので、必ず暖かい室内で管理するようにします。
ゼラニウム、特に一般的によく知られているトゥルーローズゼラニウムはバラに似た香りを放ち、化粧水などに広く利用されています。近年ではアロマオイルの香りでも人気が出ています。
ローズマリー
ローズマリーの原産地は地中海沿岸で、乾燥している環境を大いに好みます。湿気は苦手なので、風通しの良い場所で乾燥気味に育てるのが良いです。水やりは最低限でよく、多少与えなくても問題ありません。
ローズマリーは、医学で使用された最も古いハーブの一つとして知られています。さわやかな香りはリフレッシュ、リラックス効果が高く、料理から美容まで幅広い分野で用いられています。
まとめ
ハーブの水やりについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。ハーブは乾燥気味に育てるのが良いとされるものが多い中、かなり知名度の高いバジルやレモングラスなどは水やりをしっかり行って乾燥させないようにしなくてはいけない植物だということも分かりましたね。
今一度本記事のポイントをまとめておきましょう。
- ハーブの水やりは原産地の気候に合わせて行う
- ハーブの水やりは季節ごとでも異なる
- ハーブの水やりは基本的に土の表面が完全に乾いたら行う
- ハーブの水やりの回数は基本的に1日1回だが、暑い夏場や寒い冬場はこの限りではない
- 地植えのハーブの水やりは基本的に不要
ハーブを上手に育てるには、そのハーブの原産地を知り、できるだけその環境に近い育生環境を整えてあげることが大切です。また、原産地は比較的平均温度が高いところが多いので、越冬の際の温度調整が必要になることも覚えておくと良いでしょう。せっかく水やりが上手くできていたとしても、越冬準備をおろそかにしたためにハーブ苗をダメにしてしまってはもったいないです。
しっかり育てて、自分で収穫したハーブを使った料理はいつも以上に美味しいと感じることでしょう。ぜひ、ハーブ栽培に挑戦してみて下さいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。TOKYO KOTOBUKIENには他にもたくさんの記事をご用意しておりますので、是非ご覧ください。