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みなさんは植物の名前や種類をたくさん知っているという自信はありますか?ガーデニングを趣味にしている方の場合、きっと多くの植物の名前や種類を知っている方が多いのではないでしょうか。
それでは、シャクヤク(芍薬)やボタン(牡丹)という植物を知っていますか?どちらも美しい花を咲かせるため園芸植物として有名で、知っているという方も多いはずです。しかし、実はこの二つの植物はとてもよく似ておりパッと見では見分けることが難しい植物です。
この記事では、
- シャクヤクとボタンが持つ違い
- シャクヤクとボタンがどのような植物なのか
- シャクヤクとボタンの接ぎ木の活用とその方法
- シャクヤクとボタンに関係することわざと意味
について解説いたします。
これからシャクヤクやボタンを育ててみたいと考えている方や、お花が大好きな方にはきっと役に立つ記事です。この記事を読むことでボタンとシャクヤクの違いを知ることができますよ。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
シャクヤク(芍薬)とボタン(牡丹)はよく似ている
シャクヤク(芍薬)とボタン(牡丹)はとてもよく似ている植物です。そのため、間違えて混合してしまう方も多いようです。しかし、実は少しずつ違う特徴があります。
シャクヤクとボタンは見分けがつきにくく、英語ではピオニーと同じ名前で呼ばれる植物
シャクヤクとボタンはとても似ている植物のため、植物にあまり詳しくない方の場合同じ植物と混合される場合があります。また英語ではどちらの植物も「ピオニー」と同じ名前で呼ばれています。なお、日本で英語での呼び名であるピオニーと呼ぶ場合は、シャクヤクのことを指す場合が多いようです。
芍薬や牡丹はまた、石楠花にも似ている
シャクヤクとボタンは、シャクナゲ(石楠花)の花にも似ていると言われることがあります。とくに芍薬と石楠花は名前が似ているため混合されることが多いようです。しかし、シャクナゲはツツジ科の植物、ボタンやシャクヤクはボタン科の植物のためよく見ると違いが判るはずですよ。
シャクヤクのボタンとの違いや見分け方を紹介!
この記事ではシャクヤクとボタンの違いや見分け方を紹介していきます。この記事を読んで二つの植物の違いを知り、見分けられるようになりましょう。
シャクヤク(芍薬)はどのような植物?
それでははじめにシャクヤクがどのような植物なのかについて解説いたします。シャクヤクがどういった特徴を持つ植物なのかを知ることで見分けるのにも役立ちますよ。
春になると地面から新芽を出し、大輪の花を咲かせる宿根草
シャクヤクは春になると地面から新芽を伸ばし、4月から6月にかけて大輪の花を咲かせる宿根草です。一度植えつけると毎年花を咲かせるようになるため管理が楽な植物ですよ。日本には平安時代よりも前に中国経由で伝わったとされています。
シャクヤクの基本情報
シャクヤクはボタン科ボタン属の植物で、シベリアやモンゴル、中国が原産の多年草です。開花期は4月~6月と春から初夏を彩る園芸植物として古くから栽培されてきました。花の色も豊富で紅色や白色を中心に様々な色を咲かせる品種が作り出されています。別名として貌佳草(カオヨグサ)と呼ばれたり、英名である「ピオニー」と呼ばれることもあります。
科・属名 | ボタン科ボタン属 |
---|---|
原産地 | シベリア、モンゴル、中国 |
開花時期 | 5月~6月 |
花の色 | 紅色、白色薄紅色など多数 |
別名 | 貌佳草(カオヨグサ) |
花言葉は、「恥じらい」「はにかみ」
シャクヤクの花言葉は「恥じらい」と「はにかみ」の2種類存在します。どちらも柔らかく優しげな雰囲気のある花言葉ですね。シャクヤクが咲かせる美しいお花にもピッタリな花言葉とも言えます。
ボタン(牡丹)はどのような植物?
続いてボタンがどのような植物なのかについて解説いたします。比べてみると、きっとシャクヤクとの違いを読み取ることができるはずですよ。
耐寒性が強く、樹高が100㎝から150㎝の落葉低木
ボタンは耐寒性に優れ、樹高が1m~1.5mの落葉低木です。樹高がそこまで高くないため管理がしやすく庭木としてもおすすめな植物です。低木のため、ボタンも一度植えつけた後は毎年大輪の花を咲かせます。
牡丹の基本情報
ボタンもシャクヤクと同様ボタン科ボタン属の植物です。原産地は中国西北部で、非常に多様な花色を持つため百花王などと呼ばれることもあります。花色だけでなく花の形や咲き方も豊富なため、様々な品種を楽しむことができますよ。開花時期は4月~5月の春で、春のお花としても有名です。
科・属名 | ボタン科ボタン属 |
---|---|
原産地 | 中国西北部 |
開花時期 | 4月~5月 |
花の色 | 黒、紫、白、赤、桃色 |
別名 | 富貴草、百花王など |
花言葉は、「風格」「富貴」「恥じらい」など
牡丹の花言葉は「風格」「富貴」「恥じらい」と3種類あります。古くから美しい花を楽しまれてきた牡丹には品格のある高貴なイメージの花言葉付けられていますね。お花の雰囲気にもピッタリです。
シャクヤク(芍薬)とボタン(牡丹)がどっちか見分けられるようになろう
シャクヤクとボタンは似ている植物ではあるものの、異なる特徴を持つ別の植物ということが分かったかと思います。ここでは、シャクヤクとボタンがどっちかを見分けるためのポイントについて解説いたします。
分類が違う
シャクヤクとボタンは分類が異なります。同じ科、属に属しているものの草本性か木本性かといった違いがあります。
シャクヤクは草本
シャクヤクは草本性に分類される植物です。野菜をイメージすると分かりやすいでしょう。野菜であるピーマンのように毎年冬になると枝が枯れます。そして、春になると地面から新しい枝を伸ばすという特徴があります。冬になると地上部が無くなるものの枯死したわけではないため注意が必要です。
ボタンは木本
ボタンは木本性に分類される植物です。果樹をイメージすると分かりやすいでしょう。リンゴなど果樹のように冬になっても地上部が残り、春になると新芽が動き出すというライフスタイルを持つ植物です。また枝も硬く丈夫になるため古い枝を見比べてみると分かりやすいですよ。
開花する季節
ボタンとシャクヤクでは開花する季節も異なります。品種や環境によるものの、一般t系にはシャクヤクよりもボタンの方が開花時期が早いと言われています。
シャクヤクは初夏(5月中旬から6月)
シャクヤクは初夏である5月中旬~6月が開花時期とされています。毎年春先に枝を伸ばす関係上ボタンよりも花を咲かせるのが遅くなりやすいです。しかし環境によってはボタンと開花時期が被る場合もあります。
ボタンは晩春(4月後半から5月前半)
ボタンは晩春である4月後半~5月前半が開花時期とされています。気候が暖かくなってくると徐々にボタンの花が開いていくのを確認することができるでしょう。ボタンからシャクヤクへとリレーのバトンを渡すように開花時期がずれるため、お庭に両方植えると長く楽しむことができます。
葉で見分ける
シャクヤクとボタンは葉っぱの様子が少し異なります。よく観察することができる場合は葉っぱで見分けることもできますよ。
シャクヤクは葉に厚みとツヤがありギザギザしていない
シャクヤクの葉っぱは厚みとツヤがあり、小判状の形をしています。特に葉っぱの形はボタンとの違いがで大きく、どちらかの特徴を覚えておくと簡単に見分けることができるはずです。
ボタンは葉が薄く、葉の先がギザギザしている
ボタンの葉っぱはシャクヤクと比べると薄く、葉っぱの先がギザギザとしています。葉の薄さは個体差もあるため、葉の先にギザギザがあるかどうかで見比べると良いでしょう。
つぼみの形で見分ける
また、シャクヤクとボタンではつぼみの形も異なります。つぼみの形で見分ける方法について解説します。
シャクヤクは球体をしている
シャクヤクのつぼみは丸みを帯びており、球体になっています。コロコロとした飴玉のようにかわいらしいつぼみのため、花が咲く前から楽しむことができますよ。
ボタンは先が尖っている
ボタンのつぼみは丸みを帯びているものの、先が尖っています。ケーキに絞った生クリームのような形をしているためこちらもかわいらしい形のつぼみですよ。
香りで見分ける
また、シャクヤクとボタンは品種によるものの香りで見分けることもできます。
シャクヤクは甘くバラに似た香りがする
シャクヤクはお花から甘くバラのような良い香りがするものが多いです。香りを楽しむこともできるお花のため、ぜひ一度本物のシャクヤクを手に取ってみてくださいね。
ボタンは基本的に香りが少ない
一方ボタンは基本的にお花に香りが少ないと言われています。弱いものの香りがある品種もあるため、よく香りをかぐとボタンの香りを楽しむことができるかもしれません。ボタンのお花もバラのような甘い香りがします。
ボタンはシャクヤクに接ぎ木できる
実は、異なる植物ではあるもののボタンはシャクヤクに接ぎ木をすることができると言われています。下記ではボタンをシャクヤクに接ぎ木するための方法やポイントについて解説いたします。
ボタンはその早期生長を促し生産性を上げるためにシャクヤクを台木にする
ボタンの成長を早め生産性をあげるためにシャクヤクを台木にするという手法が良く行われています。まずは、接ぎ木とはどのようなものなのかについて解説します。
接ぎ木とは2つ以上の植物を接着し、新たな個体にすること
接ぎ木とは、2つ以上の植物に切れ込みを入れるなどした後に接着し、一つの新たな個体にする技術を指します。接ぎ木を行うことで病害虫に抵抗性を持たせる、成長を早めるなどの様々な効果が期待できる場合があります。ただし、接ぎ木をするためには似た分類の植物でなければできないことがほとんどで、遠く離れた植物同士では行うことができません。
台木とは大地に根を持ち、土台にする植物
接ぎ木をする際、大地に根を伸ばし、土台とする植物のことを台木といいます。主に成長が早く病気や害虫に強い性質を持つ品種や植物が選ばれます。一方花や果実を楽しむために台木に接ぐ植物のことを穂木といいます。
接ぎ木のやり方
下記ではシャクヤクとボタンの接ぎ木のやり方について解説いたします。テープや土などの資材や用品を用意して栽培にチャレンジしてみてくださいね。
シャクヤクの直線に伸びた太い根を切り取る
はじめに、8月~9月頃十分に成長したシャクヤクから、ゴボウのようにまっすぐ伸びた太めの根を切り取りましょう。枝は接ぎ木では使用しないため処分しても構いません。
シャクヤクの根に切り口をつける
切り取った根に削ぐようにして、2~3cmほどの切り口をナイフなどでつけましょう。この部分にボタンの枝を挿しこみます。
2から3個芽の付いたボタンの枝を切り口に差し込む
2つから3つ芽が付いたボタンの枝を切り口に挿しこみます。切り口がつぶれてしまわないように慎重に挿しこむようにしてください。
挿した部分をテープで縛り、固定する
挿した部分をテープで縛り、しっかりと固定しましょう。最後に接ぎ木した部分を5cm程度埋めるようにして植えつけて、たっぷりと水を与えてくださいね。
接ぎ木後は台芽かきという剪定を行う
接ぎ木をした後は台芽かきという剪定を行う必要があります。より接ぎ木したボタンの成長を促進させるために必ずチェックしておきましょう。
剪定を行わないとボタンの生育が衰えて枯れることがある
接ぎ木したあとも、シャクヤクの台木からは根本からひこばえと呼ばれる根元から伸びる枝が映えることがあります。このひこばえを取り除く台芽かきという剪定を行わないとボタンの生育が衰えて枯れてしまい、台木のシャクヤクが大きくなってしまうことがあります。
なお、肥料が多いとひこばえが伸びやすいため、肥料は適量を適期に与えるようにしましょう。
シャクヤクの芽を土の際で切るか手で折って取り除く
シャクヤクの芽が映えてきたら土の際で切るか、小さなものであれば手で折って取り除くようにしましょう。ボタンの枝は土から伸びてくることはないため見分けることができるはずですよ。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花とは
みなさんは立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花ということわざをご存じですか?こちらのことわざにはシャクヤクとボタンの両方が登場していますね。下記では、二つの植物の名前が入っているこのことわざの成り立ちや意味について解説いたします。
美しい女性の容姿や振舞いを花にたとえて形容したことわざのこと
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花ということわざは美しい女性の容姿や振る舞いを花にたとえて形容したことわざとされています。有名なことわざのため、本やドラマなどで見たことがある方も多いのではないでしょうか。
芍薬はすらりと伸びた茎の先端に美しい花を咲かせる
芍薬は、春になると根元からすらりと茎をのばし、その伸びた茎の先端に美しい花を咲かせます。この芍薬が花を咲かせる様子が美しい女性の立ち姿に例えられています。
牡丹は横向きの枝に花をつける
牡丹は横向きに伸びた枝に美しい花を咲かせます。この牡丹の花の付き方や場所が女性の座った時の美しい姿として例えられていると言われています。
百合は風を受けて揺れるさま
百合は花を咲かせると大きな花が風を受け、ゆらりゆらりと風に揺れます。この様子が女性が歩いているときの姿として例えられています。
また、漢方の生薬の使い方を例えたことわざでもある
実は、女性の仕草や振る舞いという説だけでなく、漢方の生薬の使い方を例えたことわざという話もあります。
芍薬は気が”立った”状態を改善する
芍薬は漢方では気が立った状態を改善する生薬として使用されています。また、冷え性や月経不順などにも効果があると言われています。
牡丹は”座って”ばかりいる状態を改善する
一方ボタンは座ってばかりいる状態を改善する効果がある生薬とされています。鎮静、抗炎症効果があり、血行促進効果によって月経不順や閉経に効果があるとも言われています。
百合はナヨナヨと”歩く”状態を改善する
百合はナヨナヨと歩く状態を改善すると言われており、熱を抑え咳などといった喉の症状を和らげる生薬とされています。また、精神を安定させる効果もあるためストレス解消の漢方としても扱われています。
芍薬と牡丹が同時に楽しめる!全国のおすすめスポット
シャクヤクとボタンはとても美しい花を咲かせる植物です。実は、二つの植物を同時に楽しむことができるスポットが全国には複数存在します。今回は特に有名かつ、おすすめしたい二つのスポットについて解説いたします。
北海道の小樽貴賓観「牡丹・芍薬まつり」
北海道では小樽貴賓館「牡丹・芍薬まつり」という催し物が開催されています。毎年牡丹と芍薬のお花を楽しむことができますよ。
合計750株の牡丹と芍薬を楽しむことができる
小樽貴賓観「牡丹・芍薬まつり」は合計750株の牡丹と芍薬を楽しむことができる催し物です。歴史的建造物である小樽貴賓館の壮大な雰囲気と、美しい牡丹と芍薬の花はきっと写真映えするはずですよ。
開催は、5月下旬から6月下旬
開催期間は牡丹と芍薬の開花期に合わせた5月下旬から6月下旬です。序盤は主に牡丹の花が、後半になっていくにつれて芍薬の花が咲き始めます。長く楽しむことができる催し物のためぜひ複数回訪れてみてくださいね。
アクセス
車での移動の場合JR小樽駅から約10分、小樽運河より約10分となっています。または市内路線バスに乗りJR小樽駅から「小樽水族館」行きに乗車約20分後、「祝津3丁目」で下車し徒歩5分でたどり着きます。
茨城県つくば市「つくば牡丹園」
茨城県つくば市には「つくば牡丹園」というスポットがあります。名前の通り牡丹の花を楽しむことができるだけでなく、芍薬のお花も楽しむことができますよ。
合計800種、6万株の牡丹と芍薬を楽しむことができる
茨城県つくば市のつくば牡丹園では合計800種、そして6万株の牡丹と芍薬を楽しむことができます。非常に数が多く種類も多いため牡丹と芍薬が好きな方にはたまらないスポットといえるでしょう。
4月上旬から5月下旬まで
開花期は牡丹とシャクヤクにあわせた4月上旬から5月下旬までが開園日です。シーズンが終わる前に足を運んでみてくださいね。
アクセス
上野駅から常磐線牛久駅下車後、みどりの駅行きバスに20分乗車し、茎崎若栗バス停で下車した後に徒歩5分でたどり着きます。
また、つくばエクスプレス区間快速みどりの駅下車から牛久行きバスに20分乗車し、茎崎若栗バス停で下車した後に徒歩5分でたどり着きます。
まとめ
- シャクヤクとボタンは似ているものの、実は異なる植物
- シャクヤクとボタンを見分ける場合は葉っぱの形や分類、開花時期、花の特徴で見分けると良い
- どちらも特別な資材や用品は不要で育てやすい植物
- シャクヤクとボタンはどちらも季節の花として愛されており、二つの植物を楽しむことができるスポットや催し物が存在する
です。
この記事を読んだことで、きっとシャクヤクとボタンの違い、そしてどっちかを見分けるポイントを知ることができたかと思います。シャクヤクとボタンの違いや見分け方を知っておくと、ガーデニングでどちらを植えようか考える楽しみが増えるだけでなく、豆知識として話の種にすることもできますよ。
最後になりましたがここまで読んでいただきありがとうございました。東京寿園では植物に関する記事を多く掲載しています。何か植物のことで困ったことがあった時にはぜひほかの記事も読んでみてくださいね。