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春から初夏にかけて満開になるシャクヤクの花はそれは見事なものです。大ぶりで切り花1本だけでも存在感があるのが特徴で、一気にお部屋が華やぎますね。しかしシャクヤクの花はしおれやすい、花が咲きにくいといわれていて、長持ちさせるコツや咲かせるポイントを知らない場合、つぼみを買ったまましおれることもあります。一番多い質問は花が咲かないというお悩みの声です。
そこでこの記事では
- シャクヤクとはどんな植物?
- シャクヤクの出回る時期
- 咲きやすいものを選ぼう
- シャクヤクの水揚げについて
- 長持ちさせる方法とお手入れ
についてくわしく解説します。おすすめの品種やきれいに咲かせるポイントがわかれば、お気に入りのシャクヤクをつぼみの状態から散った後も楽しむことができますよ。最後まで読み進めてぜひシャクヤクをお部屋に飾り、華やかにしてみましょう。
シャクヤクとはどのような植物?
まずシャクヤクの基本情報についてくわしくご紹介します。
元々は薬草として渡来し、大輪の花を咲かせる観賞用としても楽しめる花
シャクヤクは和名で芍薬と書く通り、元々は薬草として日本へ渡来しました。消炎、鎮痛、抗菌作用があるとされていますが、重なり合う大輪のバラのような美しさが非常に見ごたえあるため観賞用としても販売され楽しまれています。同じボタン科のボタンも似たような見た目をしていて、5月から6月にかけて開花します。
シャクヤクの基本情報
シャクヤクはボタン科ボタン属の耐寒性宿根草の草花で、中国東北部からシベリアが原産です。草丈は60~120cmと高く、栽培する際に支柱が必要です。春に地面から新芽を出し、伸びた茎から15~20㎝ほどの花を咲かせます。冬季は地上部が枯れてなくなり、地中の根っこで冬越しします。薬用植物として古くから使われており、現在は一重咲きや八重咲など数多く初夏の切り花として人気の高い花です。
科・属名 | ボタン科・ボタン属 |
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原産地 | 中国東北部~シベリア |
開花時期 | 5月~6月 |
花の色 | 赤,ピンク,白,黄,複色 |
別名 | ピオニー |
シャクヤクには様々な品種もある
古くから親しまれてきたシャクヤクは園芸品種も非常に多いのが特徴です。葉はツヤがあり、葉の先はギザギザがありません。中心が見える一重咲きや花びらの枚数が多い八重咲き、中心に花びらが密集する扇咲きなどのほかに、花の色や香りのある品種もあります。
レッドローズ:鮮赤色の八重咲き品種
レッドローズは鮮やかな赤い花びらが見ごたえのある八重咲き品種です。黄色いしべと真っ赤な花びらのコントラストが見事です。草丈は50cm~100cmになり、毎年株が大きくなり花数が増えるため庭植えがおすすめの育て方です。レッドローズはあまりに真っ赤のため花屋さんではかなり目を惹くシャクヤクでしょう。
ソルベット:ピンクとイエローの花色
淡いピンクとイエローの花色がかわいらしいソルベットという品種は、花びらの重ねが多くボリュームがあります。外側と内側の間にうすくイエローが入るため、3段に色分けしたように咲きます。ソルベットの草丈は約60cm~80cmとこぶりで手入れがしやすく、他の花との相性がよく花束にすると豪華な印象になります。
イエロークラウン:珍しい黄花の品種
ボタンとシャクヤクのハイブリッド品種として改良されたイエロークラウンは、花立ちが良く整った株姿とパステルイエローの明るい花色が特徴です。香りもよく、欧米をはじめ日本でもゴージャスな庭園や花壇に植えることが多いですよ。イエロークラウンの育て方はハイブリッドのため普通のシャクヤクと違い、茎が木質化していき、古いものは冬季に枯れることなく冬越しします。
クリスタルビューティー:純白の八重咲き品種
ブライダルブーケや装飾に人気の高いクリスタルビューティーは、純白の花びらと淡いしべが美しい大輪の八重咲き品種です。バラのような花びらとまるで香水のような爽やかな香りを放ちます。クリスタルビューティーは丈夫で育てやすく、清楚な雰囲気から切り花やブーケにするならクリスタルビューティーという位多く使われます。
シャクヤクの切り花は咲かせるのが難しい!
実は花屋さんで売られている切り花のシャクヤクは、つぼみの状態が多くあります。他の植物と違ってそのままでは咲かないんです。上手な咲かせ方がありますよ。
シャクヤクは大きな花を咲かせるのに相当なエネルギーが必要
シャクヤクの花は多くがツボミの状態で流通しています。しかし全てのツボミが咲くわけではなく、大きな花を咲かせるために相当なエネルギーが必要になります。ですからたくさん花を咲かせたいなら庭植えがおすすめなんです。反対に切り花を買う時は開きかけたつぼみを買うと咲きやすくなりますよ。
シャクヤクの切り花の咲かせ方や長持ちさせる方法を紹介
花を咲かせるのが難しい切り花をどうやって咲かせればいいのでしょう。でも安心してください。咲かせ方があるんです。切り花のシャクヤクを上手に咲かせるコツや長持ちさせる方法を、それぞれくわしく確認していきましょう。
シャクヤクの切り花を手に入れよう
まずはシャクヤクの切り花を手に入れましょう。切り花が出回る時期や値段、日持ちする期間などをご紹介します。
シャクヤクの切り花が出回る時期は3月ごろから6月頃
シャクヤクの切り花が出回る時期は3月頃から6月頃です。シャクヤクの生産量が一番多い長野県では早くから出荷され、早ければ3月下旬ごろから出回ります。
シャクヤクは5月から6月が旬
シャクヤクの生花の最盛期は、開花時期の5月から6月です。シャクヤクの品種によりますが、早ければ3月下旬から出回ります。5月はチューリップなどの春のお花から初夏、もしくは夏のお花へ移り変わる時期ですから、ブーケやアレンジにたくさんのバリエーションが増えて楽しみが増えるでしょう。
お花屋さんや通販でも販売している
シャクヤクの切り花はお花屋さんや通販でも様々な購入方法で販売されています。もし初めて切り花を購入するなら、お花屋さんで実物を見てからがおすすめです。通販で購入する時は、切り花がどんな状態で届くのか見ることができません。それらを踏まえた上で購入してください。そこで咲きそうな花の様子や品種の咲き方を把握して、慣れてきたら通販でも購入してみましょう。
シャクヤクの切り花の値段は約400円から
気になるのが切り花の値段ですね。流通時期や品種によって多少の変化がありますが、平均して1本約400円ほどの価格で売られています。人気が高く、開花した際花の直径15cmを越える品種がほとんどですから、どうしても他の切り花よりも価格が上がってしまいます。しかしシャクヤク1本で十分ほどボリュームがあるため、1本だけ数日楽しめると思えば安いのかもしれません。
シャクヤクの切り花の日持ちは5日間程度
日持ちはどれくらいするだろうと気になります。もし満開に開花しているものならば、購入してから5日間は香りと美しい状態を楽しめるでしょう。固いままのつぼみを購入した場合は、うまく咲かせられれば1週間くらい。しかし咲かずに枯れてしまう可能性も開花している切り花に比べて高いため、咲くか咲かないかは運によるでしょう。
シャクヤクの切り花は咲きやすいものを選ぼう
それではどうやって咲きやすい切り花を見分けるかですが、大きく2点ポイントがあります。ひとつは、つぼみが少し膨らんできているもの。そしてもうひとつは、葉っぱにハリがありしっかりしているものです。それぞれくわしく解説します。
つぼみが少し膨らんできているもの
シャクヤクのつぼみは、開花後の大きさに比べてかなり小さいのが特徴です。つぼみの状態では花からベタベタした蜜のようなものが出て、花びらやガクがくっついて開花しにくくなることも。そのため店頭でシャクヤクを購入する際は、つぼみが少し膨らんで開きかけているものを選んでください。
葉っぱにハリがありしっかりしているもの
もうひとつのポイントは、葉っぱにハリがありしっかりしているものです。これは生花すべてにいえることですが、流通の段階でシャクヤクの切り花から体力が減ってしおれてしまうため、できるだけ体力のある切り花を選ぶ必要があります。水揚げや管理がしっかりされている切り花なら、葉っぱが瑞々しくハリがあって緑の色合いも良いですよ。購入時にはぜひチェックしてみてください。
シャクヤクの切り花を咲かせる「水揚げ」を行おう
シャクヤクの花を咲かせるためには自宅での水揚げがとても大切です。しなければそのまましおれてしまうこともありますから、必ず行いましょう。
購入後のシャクヤクは休眠状態にある為なかなか咲かない上、そのまましおれることも多い
店頭のシャクヤクは開花が進まないよう休眠状態で管理されています。ですから購入後はできるだけ早く水揚げして、休眠から起こす必要があります。水揚げが十分でない場合、つぼみが開きにくくそのまましおれることも多いので、しっかりと水揚げしてから活けてくださいね。
①葉っぱを下のほうを中心に取り除く
まず水揚げの前準備として茎の下のほうを中心に葉っぱを取り除きます。葉っぱが必要以上についていると、葉から水分が蒸発してしまいますから水揚げの効果が薄れることも。気をつけたいポイントです。
花を咲かせるのに多くのエネルギーを用いるため
葉っぱを取りのぞく理由は、シャクヤクの大きな花を咲かせるためにエネルギーと水を分散させないためです。大輪の花は非常にエネルギーを使います。葉っぱが多ければエネルギーも水分も分散しますので、花屋さんですでに取り除かれていますがご自分でもぜひフラワーベースや長さに合わせて葉の量を調整してください。
水に浸かる部分はすべて取り除く
どのくらい取り除くのか気になりますね。葉っぱを取り除く目安として、水に浸かる部分は全て取り除くと覚えてください。これは葉が水に浸かると腐りやすくなって、水が汚れてしまう原因になるからです。こまめな水替えが大切ですから、水を替える時一緒に浸かった葉や腐った葉をその都度取り除き、清潔な状態を保ちましょう。
②つぼみが固い場合、早く咲かせたい場合は手で頭をやさしく洗う
次につぼみの状態を確認します。もしつぼみが固い場合、または早く咲かせたい場合は手でつぼみの頭をやさしく洗います。洗うといっても、つぼみについた蜜を濡れたティッシュなどでそっと拭き取るくらいがベスト。蜜でくっついていた花びらがほころび、咲きやすくなります。逆に開きかけたつぼみは、傷や蒸れの原因になるため水やティッシュで洗わないよう注意してください。
③ぴったりと新聞紙でまく
不要な葉っぱを取り除き、つぼみを洗ったら次は新聞紙で切り花全体を巻きます。新聞紙で巻くのは茎が折れたりつぼみが落ちたりするのを防ぐためで、茎の下10cmくらい残してつぼみまでぴったりと巻くのがポイントです。新聞紙の端はテープなどで数か所留めましょう。
④水切りし、深水に着ける
水揚げの方法はいろいろありますが、シャクヤクの場合深水がおすすめです。シャクヤクは水が上がりにくいので、水圧を利用して水分を吸い上げさせます。新聞紙に巻いた茎の先端を斜めにカットし、茎の断面を広くしてください。茎の中心にある白くふわふわとした綿のようなものを軽くこそげ取るのも忘れずに。こうすることで水切りしやすく、しっかり水揚げされます。
水の量は茎の半分以上
深水で必要な水の量は茎の半分以上まであることが望ましいです。バケツの中へまず水を入れて水切りしたシャクヤクを入れます。そして水が足りなければそっと足し、多い場合は余分な量を減らしましょう。新聞紙が濡れても茎の半分まで水があればOK。花の部分にまで水がかからないよう気をつけてください。
半日したら花瓶に移す
深水の時間はおよそ半日ほど。水圧で吸水させるとはいえ水が上がりにくく、たくさんの水分が必要なシャクヤクですから、あわてずにじっくりと時間をかけて吸水させれば見事な花が咲くでしょう。花瓶は茎の長さに合うものか、15cm~20cmの高さがおすすめです。花瓶の中へ入れる水の量は、葉っぱが浸からないくらいにしてください。
シャクヤクの切り花を長持ちさせる育て方とお手入れ
水揚げした後は切り花を長く鑑賞したいもの。咲き始めから一枚、また一枚と散っていく姿もまた美しいシャクヤクの切り花。長持ちさせる育て方とお手入れについてご紹介します。
水切りをする
シャクヤクの切り花は、こまめに水切りしましょう。毎日水替えと一緒に行うのがおすすめです。ポイントは2点。水の中で茎を斜めにカットすることと、1日に1回すること。水切りして常に茎の切り口を清潔にしておくことで、腐りにくく長持ちしますよ。
水の中で茎を斜めにカットする
水が上がりにくいシャクヤクは、水の中で茎の切り口を斜めにカットすると吸い上げやすくなります。斜めにカットすると切り口の断面が広くなり吸い上げる水量が増えます。また水の中でカットすることで汚れやゴミを洗い流し清潔に保つことができるため、洗面所やバケツの水の中などご自分にあった方法で行いましょう。
1日に1回程度行うとよい
水切りの頻度は、1日1回が目安です。毎日するのが難しいと思われるかもしれませんが、茎の断面や葉は水でどうしても腐りやすく、水が汚れてしまいがち。水が汚れればそれだけ雑菌が繁殖して切り花の日持ちが悪くなりますから、水換えと一緒のタイミングで1日1回するようにしてください。
毎日水替えをする
水切りと合わせてしたいのが毎日の水替えです。水替えは案外簡単で活けている花瓶から切り花を取り出して古い水を捨て、花瓶へまた新しい水を入れるだけです。また雑菌繁殖の予防に花瓶の内側をスポンジや雑巾などでキレイに洗い落としておくと、花が長く鑑賞できます。洗剤を使う際は食器用の中性洗剤がおすすめです。
つぼみの蜜をふき取る
咲かせ方のポイントでもお伝えしたように、シャクヤクの品種の中にはつぼみから蜜のようなものを出してベタベタしてしまうことがあります。蜜を放置しておくと害虫がわいたり、開花しなかったりしますので、やさしくふき取ってください。
蜜が蓋となり開花の妨げになることもある
なぜ蜜があると開花しにくくなるかというと、ベタベタした蓋のようにつぼみ全体を覆って固まってしまうからなんです。水や置き場所が問題ないのに咲かない理由の一つでもあります。蜜を放置しておくとアブラムシなどの害虫がわきやすくなり、開花前にしおれる心配もありますよ。上手に開花するよう手をくわえてあげましょう。
ガクの部分からふき取る
蜜を拭き取る時は、つぼみの付け根にあるガクの部分からていねいに拭き取りましょう。あまり強い力で拭くとガクからぽろっとつぼみが落ちてしまうので、ティッシュなどの柔らかいもので軽くなでるように拭き取ってください。頭の部分まで拭いたら、あとは開花するのを待ちます。
風通しのよい直射日光の当たらない場所に飾る
シャクヤクが好む置き場所は、風通しのよい直射日光の当たらない場所がおすすめです。シャクヤクは明るい半日陰を好んで育ちます。一日中日光が当たると開花があっという間に進みますし、花びらが日光で焼けて茶色くなります。カーテン越しに日光の当たる場所へ置き、時々人が出入りしたり窓からの風が入ったりなど風通しよくしておきましょう。
シャクヤクの切り花から挿し木して増やすことはできる?
さて、切り花のシャクヤクを楽しんだあとは増やせるかどうかについてご紹介します。ボタンのようにシャクヤクも挿し木できるかどうか確認していきましょう。
挿し木で増やすことは難しい
結論から申し上げますと、挿し木で増やすことは難しいです。シャクヤクはボタンのような樹木ではなく、球根から茎が伸びる草花だからです。同じような切り花だからと挿し木しようとしてもうまくいきません。しかしイエロークラウンのように牡丹とシャクヤクのハイブリッド品種ですと、挿し木できる場合があります。
シャクヤクを鉢植えや地植えしている場合、株分けで増やすのがおすすめ
もしシャクヤクを切り花ではなく、鉢植えや地植えしている場合株分けで増やすことができます。9月から10月が株分けの適した時期。4、5年に1回を目安に株分けしましょう。3~5つくらいずつ芽がついた株ごとにわけ、葉は半分くらいに切り詰めます。掘り上げる際、根を傷つけないよう周囲の用土ごと掘り上げていき、株分けしたあとは雑菌が侵入しないよう、切り口に殺菌剤を塗って植え付けます。
まとめ
- シャクヤクの切り花が出回る時期は3月ごろから6月頃
- 切り花の値段は1本400円くらいから、日持ちは5日間くらい
- 咲きやすいのは、つぼみが少しふくらんでいるものや葉っぱにハリがありしっかりしているもの
- 購入したら水揚げして、半日しっかり水を吸わせる
- 水切りや毎日の水替えなどお手入れをていねいにする
- シャクヤクは挿し木ではなく、株分けでふやせる
以上のことがわかりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。TOKYO KOTOBUKIENには他にもたくさんの記事をご用意しておりますので、是非ご覧ください。