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暑い日差しの下で鮮やかな花を咲かせるサルスベリは、街路樹や庭木などで人気の花木です。丈夫で初心者でも育てやすい特徴をもつサルスベリですが、どのように増やすのかご存じでしょうか。サルスベリは種子をつける樹木ですが、しっかりとした苗を早く作り出すには「挿し木」がおすすめです。
そこでこの記事では、
- サルスベリはどのように増やすことができるの?
- サルスベリの挿し木を2種類ご紹介
- サルスベリの挿し木のやり方:挿し穂の作り方
- サルスベリの挿し木のやり方:準備するものについて
- サルスベリの挿し木のやり方:挿し木の手順
- サルスベリの挿し木はひこばえでもできる?
- サルスベリの挿し木を発根させるための方法
以上のポイントについてご紹介していきます。
サルスベリの挿し木は成功率も高いので、初めてチャレンジする方にもおすすめです。しかし、ちゃんとした手順を知らないと発根しないこともあるので注意しましょう。この記事ではサルスベリの挿し木の方法や上手に発根させるコツについて詳しくご紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
サルスベリは挿し木で増やして育てよう
サルスベリは「百日紅」という和名をもつことからもわかるように、夏場に3カ月近く開花する貴重な植物です。暑い時期の7月から10月くらいまで花を楽しむことができるので、公園や街路樹で見かけたことのある方も多いかもしれませんね。まずは、サルスベリの特徴や挿し木での増やし方について学んでいきましょう。
サルスベリは花木や庭木としても楽しめる落葉性の樹木
サルスベリは花木や庭木、シンボルツリーとしても楽しむことのできる落葉性の樹木です。鮮やかな色の花をたくさんつけるので、見栄えが良くパッと目を惹く豪華さがあります。落葉性の樹木なので、落ち葉の処理が必要ですがサルスベリの葉は大きくないので邪魔になることも少ないはずです。
丈夫なサルスベリは、ポイントを押さえれば挿し木で増やすことができる
丈夫で育てやすいサルスベリは、手順のコツやポイントさえ押さえれば挿し木で増やすことができます。種まきで増やすよりも、挿し木や取り木はすぐにある程度の大きさの苗を手に入れることができるメリットがあります。挿し木は作業も難しくはないので、初めての方でもぜひサルスベリの挿し木からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
サルスベリを挿し木して発根させる方法を解説
サルスベリは挿し木で増やすことがおすすめの樹木ですので、この記事ではその方法だけでなく効率的に発根させる方法も解説していきましょう。ポイントさえ押さえていれば、一本の枝から苗を作ることができますのでコスパも抜群ですよ。
サルスベリの挿し木は2種類!
では、まずはサルスベリにはどのような挿し木の方法があるのか解説していきましょう。
サルスベリの挿し木は、春と夏の年2回の時期に行うことができる
サルスベリの挿し木は春と夏の年2回の時期、2種類の方法で行うことができます。春の挿し木は「休眠枝挿し」と呼ばれ3月~4月の時期が適期です。夏の挿し木は「緑枝挿し」と呼ばれ7月~8月の生育力が旺盛な時期に行います。それぞれの特徴やメリット・デメリットについてご紹介していきましょう。
休眠枝挿し
まずは春の時期に行う休眠枝挿しについて解説していきましょう。
挿し木する時期は3月から4月
休眠枝挿しをする時期は、春の3月~4月です。この時期にはサルスベリはまだ休眠中で、葉が伸びていない状態ですので挿し木をする枝をカットしやすいメリットがあります。葉っぱがすべて落ちている状態で挿し穂を作るので、なるべく若く元気な枝を選ぶようにしましょう。
休眠枝挿しは、落葉した枝を切り取って挿し穂にする
休眠枝挿しは落葉したサルスベリの枝を切り取って挿し穂にします。デメリットとして、まだ休眠中の枝を使っているので発根するのが比較的ゆっくりで時間がかかることでしょう。また、寒い時期に行う挿し木なので遅霜や寒さにあたらないように工夫する必要があります。
緑枝挿し
次に、夏の時期に行う緑枝挿しについてメリットやデメリットについてご紹介していきましょう。
挿し木する時期は7月から8月中旬
緑枝挿しする時期は葉や花が盛んである7月~8月の時期です。梅雨が明けると、5月~6月に伸びた緑色の新枝がしっかりと固まって茶色に変わってくるので、そのタイミングで挿し木の作業を行うようにしましょう。7月から開花が始まるので、様子を見ながら花が咲く前の枝をカットできると良いですね。緑枝挿しは暑い時期に行うので霜や寒さの心配をする必要がなく、寒い地域にお住いの方にもおすすめです。9月に入るまでに作業を終わらせると、根が出やすい温度を保つことができます。
春に芽吹いて新しく伸びた枝を挿し穂にする
春に芽吹いて新しく伸びた枝を挿し穂にする「緑枝挿し」は、生育力が旺盛で発根もしやすいメリットがあります。また、葉や新芽の成長を確認しながら挿し穂を作ることができるので状態の良いものを選ぶことができるのも良い点でしょう。この時期に挿し木をする注意点として、暑い時期なので乾燥に十分注意して多湿になりすぎないように、かつ水切れをおこさないように注意することです。
サルスベリの挿し木のやり方:挿し穂の作り方
サルスベリの挿し木の種類がわかったところで、ここからは作業の手順についてご紹介します。サルスベリの挿し木のやり方の一番目として、最も重要な「挿し穂」の作り方について解説していきましょう。
①芽が出る20センチ程度の枝を用意する
サルスベリの挿し穂は、芽が出る20センチ程度の枝を用意しましょう。生育期の夏場に行う緑枝挿しで行う際は、実際に出ている新芽や葉の状態を確認して良いものを選びましょう。その年の春に伸びた新しい枝を選ぶのがポイントです。休眠枝挿しで行う際は、葉が落ちた状態ですので枝の状態をしっかりとチェックして挿し穂にするものを選びましょう。挿し木に使う枝は発根せずに枯れてしまうことも考えられるので、場所があれば10本くらい用意するのがおすすめです。
②切り口はくさび形にする
挿し穂を作る際のポイントとして、切り口をくさび形にすることが挙げられます。くさび形は斜めにカットした後に、反対側からも同じように斜めにカットすることで作ることができます。切り口全体を見るとv字型になっていることがわかるはずです。
給水効率を上げる
切り口をくさび型にすることによって、吸水面積が増えるので挿し木した後に効率よく水を吸い上げることができます。また、同じように発根する面積が増えるので根の定着率も高くなることが期待できるのです。
ナイフやカッターがおすすめ
くさび形の切り口を作る時には、よく切れるナイフやカッターを用いましょう。他の植物を取り扱う時に使ったものであれば、病気の感染を防ぐためにあぶって消毒するか、アルコールなどで除菌してから使うのがポイントです。
③水揚げする:用意した枝を水につける
くさび形に切り口を切れたところで、次に「水揚げ」の作業を行いましょう。水揚げは、挿し穂として用意した枝を水につける作業を指します。大きめのバケツなどに水道水をたっぷりと入れて、挿し穂の切り口を水に浸しておきましょう。
乾燥による枯死を防ぐ
水揚げをするメリットとして挙げられるのが、乾燥による枯死を防ぐという点です。挿し木を行う上でよくある失敗が、乾燥しすぎて枯れてしまうことなのでしっかりと水揚げの作業を行って挿し穂の全体に十分な水分をまわしてあげましょう。
30分から1時間程度つける
水揚げの作業は30分から1時間を目安に水につけておきます。暑い時期に作業をする時には、水が温まってしまわないように明るい日陰に置いておくようにしましょう。水につけている間に、次の項目で説明するような鉢の用意をしておくのが効率的です。
休眠枝挿しは剪定した枝を使うこともできる
挿し穂の準備について解説してきましたが、休眠状態の3月~4月に行う休眠枝挿しは剪定した枝を使うこともできます。サルスベリの剪定の適期は2月~3月なので、枝を整理するついでに挿し穂の準備をしても良いですね。剪定の枝を使う時は、枯れて乾燥していないようなしっかりと充実したものを選ぶようにしましょう。暖かい地域であれば、2月の下旬に挿し木の作業を始めても大丈夫です。
サルスベリの挿し木のやり方:準備するもの
サルスベリの挿し木のやり方の二番目として、準備するものについて解説していきましょう。挿し木の作業を行う上で、必要となるものはそれほど多くはありませんし他の植物の挿し木を行う際にも共通して用いることができますので園芸を趣味で行う方は用意しておくと良いですね。
用土:通気性と保水性、水はけのよい土
挿し木を成功させる上で重要なのが用土です。乾燥のし過ぎも良くないのですが、湿った状態が続きすぎるとカビなども発生してしまう危険性もあります。そのため、使用する用土は下記に挙げるような通気性と保水性、水はけの良いものを選ぶようにしましょう。
小粒の赤玉土や鹿沼土が一般的
挿し木に適した用土は、小粒の赤玉土や鹿沼土が一般的です。こちらの2種類はいずれも通気性や排水性に富んでいて、ある程度の保水性もありますので挿し木を上手に管理することができるはずです。
市販の挿し木用土もおすすめ
赤玉土と鹿沼土の他にも適しているのが市販の挿し木用土です。こちらも通気性や保水性に優れているので、いろいろな植物の挿し木に適しています。赤玉土と鹿沼土と比べると少し、保水力が高いので挿し木用土を用いる際には少しだけ乾かし気味に管理すると良いでしょう。
鉢:通気性の良いものが良い
挿し木に使う鉢は通気性の良いものが適しています。素焼き鉢や陶器鉢、駄温鉢などプラスチック製ではないものを選ぶとより良いですね。あまり高さがないような種類を選び、倒れにくいようにしましょう。10本以上の挿し木を行う場合には、連結になった黒い育苗トレーもおすすめです。
細い棒
細い棒は、割りばしなどが適しています。こちらの棒は挿し穂を立てる時の穴を空けるために用いるので、枝の太さくらいのものを選ぶのがポイントです。
用意したサルスベリの挿し穂
前の項目で作ったサルスベリの挿し穂を準備しましょう。こちらは水揚げした状態にして、乾燥しないように注意します。大きい葉っぱがついているものは、挿し木後の水分の蒸散を防ぐために半分の大きさにカットしておきましょう。枝の下部についている葉は切り落としてしまって問題ありません。
発根促進剤
発根促進剤は、市販の「ルートン」などを用意しましょう。発根促進剤を切り口に塗布することで、発根率が上がりますので忘れずに用意しておくのが成功率を上げるコツのひとつです。
サルスベリの挿し木のやり方:挿し木の手順
挿し穂と道具の準備ができたところで、この項目では実際にサルスベリの挿し木を行う手順について解説していきます。それぞれの手順は難しくありませんので、園芸初心者の方も丁寧に行えば問題ありません。
挿し木用土を鉢に入れる
まずは、赤玉土や鹿沼土、挿し木用土を通気性の良い鉢にいれましょう。ふちのぎりぎりまでは入れずに、水がしみこむためのスペース分はふちから下げておくのがポイントです。1㎝程度、下げて土を入れておきましょう。鉢の底面の穴が大きくて用土が漏れる場合は、鉢底ネットを用います。
細い棒で挿し穂を挿す穴をあける
鉢に入れた用土を水で湿らせた後に、細い棒で挿し穂を指す穴を空けましょう。鉢の広さが大きい場合には、2本から3本まとめて同じ鉢に挿し木をしても問題ありませんよ。
挿し穂に少量の発根促進剤をつけると発根しやすくなる
用土に穴を空けたら、実際に挿し穂を指す前に切り口に少量の発根促進剤を塗布しておきましょう。キャップなどに出した発根促進剤を切り口に塗布して、少し揺らして払い落としてから用土に挿していきます。
挿し穂の高さの3分の1~半分くらいを用土に挿す
次に、倒れないように挿し穂の高さの3分の1~半分くらいを目安に用土に挿しておきましょう。土に入る分に葉がついている場合には、2枚~3枚を残してカットしても問題ありません。大きな葉が挿し穂についている場合は、葉からの水分の蒸散を防ぐため、また重さで倒れにくくするために半分の大きさに葉をカットしておきましょう。
挿し木の作業が終わったら、明るい日陰の場所で乾燥させないように注意しながら管理しましょう。しっかりと根が出て大きくなるまでは、十分に吸収できずに弱ってしまう可能性があるので肥料を与える必要はありません。ある程度の大きさに育ったサルスベリの挿し木は、春の4月~5月か秋の9月~10月に植え付けを行いましょう。
サルスベリの挿し木はひこばえでもできる!
挿し木の手順をご説明したところで、剪定でカットすることの多い「ひこばえ」を挿し木にする方法をご紹介したいと思います。
ひこばえとは親木と別れて株本から新芽ができたもの
「ひこばえ」はあまり耳にすることのない単語かもしれませんが、剪定を行う際に真っ先にカットしても良い枝なのでご存じの方もいるかもしれません。親木の根元の土の中から生えることの多いひこばえは、生育力が旺盛な新芽なので挿し木にするメリットが大きいのです。
サルスベリの剪定では不要な枝として切り取られることもある
サルスベリを含む多くの樹木の剪定では、ひこばえは不要な枝として切り取られることの多い存在です。根元からまっすぐに立ち上がったり、茂ったりする新芽なので初めての方でも見つけやすいのではないでしょうか。ひこばえを剪定することによって、親木に養分のほとんどを与えることができるので若く、健康なサルスベリであれば率先してひこばえをカットするようにしましょう。
親木の成長を阻害する場合はそのままにしよう
ひこばえは親木が弱ってきた際の保険として考えられていもいますので、親木に元気がなく、ひこばえを切り取ることで枯れてしまうのではないかという心配がある場合にはそのままにしておきましょう。また、取りにくくカットしてしまうと親木を傷つけてしまう可能性がある場合にもひこばえは残しておくのが無難と言えるでしょう。
挿し木の方法はひこばえの根ごと取り分けて植え付ける
ひこばえの挿し木の方法は、枝と異なり根もついた状態で取り分けて植え付けることが基本です。根がついているので、一から発根させるよりも手間が省けて根の定着率が良いことも期待できます。ひこばえの挿し木に使う用土も、挿し木と同じものを用いるようにしましょう。
ひこばえの挿し木は発根させる必要がないため簡単
ひこばえは、発根させる必要がないので初心者でも簡単に苗を作ることができます。そもそも、ひこばえ自体が生育力が旺盛な部分なのですぐに新しい根や芽を作ってくれるはずです。乾燥させないように管理に注意しながら、大きくなるのを待ちましょう。葉が多く出るようになってきたら、鉢植えのサイズを大きくしたり庭に植え付けをしてさらに成長させてあげます。
サルスベリの挿し木を発根させる方法
最後に、サルスベリの挿し木を上手に発根させる方法やコツについてご紹介します。こちらのポイントを押さえておくことで、サルスベリの挿し木の成功率が上がりますのでぜひ試してみてくださいね。
①発根前は乾燥しやすいため、明るい日陰に置く
発根する前の挿し穂は乾燥しやすいので、直射日光が当たりすぎない明るい日陰に置くようにしましょう。挿し木を行う上でよくある失敗として、乾燥による水切れや多湿によるカビなどが挙げられます。明るい日陰で乾燥させないようにするとともに、霧吹きなどで水を与えることで多湿を防ぎましょう。
②発根しやすい土の適性温度20度から25度で管理
発根しやすい土の適正温度は20度から25度ですので、休眠枝挿しの場合は温室や室内で管理することで発根を促すことができます。挿し木した苗自体をビニールで覆うのも効果的です。緑枝挿しを行った際は、夏場の温度が上がりすぎないように風通しの良い場所で管理してあげましょう。
③湿度が高く90%以上あると発根しやすい
挿し木は湿度が90%以上あると発根しやすいので、なるべく多湿の状態で栽培するようにしましょう。適度に土の表面を湿らせながら、葉や枝にも霧吹きで水をかけてあげると良いですね。前述したように、ビニールで鉢を覆うのも効果的です。また、6月後半~7月の梅雨の時期に挿し木の作業を行うと成功しやすいのでおすすめですよ。
④発根させるまでは挿し穂を動かさない
挿し木を行った際に、気になるのがいつ発根するのかということなのではないでしょうか。しかし、挿し穂を動かしてしまうとせっかく出てきた細い根がちぎれてしまう危険性がありますので、動かさないように気を付けましょう。ちゃんと挿し穂が生育しているのかどうかは、残しておいた葉の状態や新芽で確認すると良いですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
夏の代表的な花木であるサルスベリの挿し木についてご紹介させていただきました。サルスベリはほとんど肥料を必要としないほど、生育力が旺盛な植物です。鉢植えでの栽培も簡単なので、挿し木をすることでコンパクトなサイズのサルスベリを楽しんでみるのも良いのではないでしょうか。
この記事のポイントは以下の通りです。
- 生育力が旺盛なサルスベリは挿し木で増やすのがおすすめ
- サルスベリの挿し木は休眠枝挿しと緑枝挿しがある
- サルスベリの挿し穂の切り口はくさび形にするのがポイント
- サルスベリの挿し木では発根促進剤を塗布すると成功率が上がる
- サルスベリの挿し木は明るい日陰で管理する
- サルスベリはひこばえが出やすい植物なので、ひこばえでの挿し木もおすすめ
- サルスベリの挿し木を発根させるために、温度や湿度を保つことや動かさないことが重要